こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。
前回の記事でも紹介した通り、今週は集中して各世帯の野菜栽培状況の調査で村をまわっていました。
昨日も何世帯かまわったのですが、嬉しい出来事があったのです。
Svay Sar村(クメール語でSvay=マンゴー、Sar=白。つまり「白いマンゴー」という意味)に住んでいる対象世帯をまわっていた時のこと。
車から出て、家がある方向に歩いて行くと軒先から、大声でこちらに声をかけ、手招きをする男性がいました。
この村に住むパオさん。彼も地雷事故の被害者です。
クメール・ルージュの看護係としてカンボジア南西部のココン州に赴いていた1987年、彼は地雷事故に遭ってしまったのです。中国製対人地雷 Type-72によって、右足の甲から先が失くなってしまいました。
また、戦闘中に右腕に銃弾を受けたそうです。弾はすでに取り除いているのですが、今でも銃痕が痛々しく残っています。
実施している生計向上支援プロジェクトでは、今年度は養牛、養鶏、やぎ飼育の中から1種類の技術提供、並びに家畜の提供を行います。パオさんは養鶏技術訓練の対象者です。
来週行うトレーニングを前に、すでに鶏舎の建設が進んでいます。
パオさんは、簡単なクメール語しか理解できない私に、身振り手振りを交えて何やら嬉しそうに話しかけてきます。その時のきらきらした笑顔がとても印象的でした。
彼の後ろについて行くと、建設が完了した鶏小屋がありました。それを見た時、彼が嬉しそうに話していた内容が理解できたのです。
私たちが提供したのは、大きな鶏舎です。
しかし、その中には木材と緑色のネットで作られた小さな籠がありました。ようやく一緒に動いていたカンボジア人スタッフがこちらに来て通訳をしてもらうと、どうやらこの小さな籠は彼自身が作ったものだったのです。
「雛が生まれたら、この箱に入れるんだ!」
色々な目的がありますが、鶏が卵を産んでひよこが生まれたら、ヘビやネズミから護るために小さな巣箱に移して飼うのです。
まだ技術訓練もしていないのに、まだ鶏自体を提供してもいないのに、もうやる気満々、準備万端なのです。
養鶏技術のトレーニングは来週実施する予定なので、もちろん、まだそのようなアドバイスもしていません。
パオさん自身で鶏を飼うのに必要なものを考え、作っていた。
そのことがとても嬉しかったのです。
そして先月配布した野菜の種も、ばっちり植えていました。
どんなプロジェクトもそうですが、事業実施者だけではプロジェクトは成立しません。
そこには、支援対象者や事業をサポートしてくださる多くの方々の存在が欠かせないのです。
国際協力に携わる方なら一度は考えたことがあるであろう「受益者」「支援者」などといった言葉に対する違和感。
私も2年前にウガンダの支援現場を訪れてから、これらの言葉を使うことに抵抗がありました。
どうしても支援を「する側」「される側」といった関係が表出してしまうような気がして。
しかし、対外的に説明する際には、他の言葉になかなか置き換えるのが難しいのも事実です。
自分としては、日本をはじめ世界中で私たちの活動に共感し、応援をしてくださる方々も、私たちの支援対象者である紛争被害を受けた村の人たちも、みんな「パートナー」だと思っています。
他にも様々なセクターの人間が関わって、ひとつの事業が展開できるのですが、それぞれの立場や役割を超えて、「世界を平和にする」という一点においては、紛れもない「パートナー」なんだなあと。
そんなことを思わせてくれるパオさんでした。

人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
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