新卒NGO職員がゆく。|延岡由規のブログ

気にしていたいのはいつだって、世間よりも「世界」だ

国際協力/貧困問題に取組むあなたへ-知っておかなきゃいけないこと。

本日はカンボジアの国民の祝日。「虐殺政権からの解放日」です。

39年前の1979年、クメール・ルージュのポル・ポト派による政権が崩壊しました。それを記念して、毎年1月7日は祝祭日となっています。ただ、今日は日曜日なので振替休日で三連休をいただいています。

日本も成人の日で三連休ですよね?

 

 

今回は、そんな休日にわたしが観た映画を紹介します。

 

・今まさに、国際支援の現場に携わっている方

・青年海外協力隊やボランティアで「途上国」に行く予定のある方

・グローバルなソーシャルビジネスをしたい方

 

それから、

 

・NPO/NGOに寄付をしたいと考えている方

 

におすすめです。

つまり、国際協力・貧困問題に関心のある方すべてに観ていただきたい映画です。

 

その映画はこちら。

 

 

『ポバティー・インク〜あなたの寄付の不都合な真実〜』

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すでに観たことがある方も多いかもしれません。

2014年にアメリカで製作され、日本では2016年8月6日に一部の映画館で公開が開始されました。

 

 

映画の概要

『ポバティー・インク』の公式サイトによると、以下の通りです。

 

「貧しい気の毒な人たちのために手を差し伸べよう」「彼らは無力で何もできない」

そんなイメージを謳い、繰り広げられてきた営利目的の途上国開発は、今や数十億ドルに及ぶ巨大産業となっている。その多くの援助活動が失敗に終わり、援助の受け手がもともと持っている能力やパワーも損ないさえする。

私たちの「支援」がもたらす問題は?正しい支援のあり方とは?途上国とどう向き合うべきなのか?ハイチやアフリカを主な舞台に、支援される側の人たちの生の声を伝えるドキュメンタリー。
引用:映画『ポバティー・インク ~あなたの寄付の不都合な真実~』 公式サイト Poverty, Inc.

youtu.be

 

国際協力において触れることが、ある種タブー視されている「援助のビジネス化」「貧困産業」

普段なかなか声の届かない、「支援される側=受益者」の視点で、行き過ぎた支援/援助の現実が描き出されています。

 

 

名ばかりの「貧困削減」「国際援助」

『ポバティー・インク』は2016年の公開後、東京に用事があった際に渋谷のアップリンクで観たことがあります。

その時の率直な感想は「こんなのありか」ってこと。

 

 

当時は1年間の休学期間を終えて、学生生活を送っていました。つまり、ウガンダで5ヶ月間、カンボジアで3ヶ月間のインターンをし、国際支援の現場でがっつりと活動をした後のことです。この時にはすでに、国際協力NGOへ就職という大学卒業後の進路も決まっていました。

この先、国際協力と長く付き合う上で「本当に意味のある支援/援助って何だろう?」という問いを考えていこうとしていた頃、この映画を観ました。

 

ウガンダやカンボジアでは規模は大小あれど、たくさんの援助機関が活動をしてきました。実際にそれらの専用車両と道路ですれ違うこともしばしば。

長年、数多くの援助機関が介入をしているこのような国は、「援助漬けの国」なんて表現されることもあります。

ただ、現地で生活していると、ひとつの疑問が湧き上がってきたのです。

 

「これまで数多くの関係機関が支援を展開してきた(している)にも関わらず、なぜ未だに問題が解決されないのだろう?」

 

 

何度も読み返している、テラ・ルネッサンス理事長の小川さんは著書でこのように書いています。

過去50年問、欧米諸国は230兆円もの援助マネーを使ってきましたが、欧米諸国からのこの莫大な援助や開発資金はアフリカを改善するどころか、絶望的な混乱を招いています。
引用:『ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?』小川真吾、合同出版

 

230兆円って想像できますか?

 

 

同書では「6000年前の縄文時代前期から、毎日、1億円を使い続けても使いきれないほどの金額」と表現されています。

ぼくらのアフリカに戦争がなくならないのはなぜ?

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国際社会はこれまでに、とんでもない額のお金を「援助」につぎ込んできました。

それでも問題が解決されていないのは、なぜでしょう。

 

 

『ポバティー・インク』を観たら、その一因が理解できます。

 

人々の善意から生まれる「援助」がやがてビジネス化し、現行の「貧困ビジネス」「援助産業」によって現地の人たちの生活に、いかにネガティヴな影響が及んでいるかがありありと描かれています。

その中では、特定の個人や組織、国にも言及しています。

 

 

援助ビジネスの様態を改めて突きつけられたこと。

加えて、「メディアってここまでできるんだ」という驚きと感嘆の気持ちも含めて「こんなのありか」という感想を抱いたことを覚えています。

 

 

そして今、国際協力NGO職員として支援現場に立つ者として「もう一度観ておきたい」と思い、帰国時に購入したDVDを持ち帰ってきたのです。

 

「本当に意味のある支援/援助とは?」

 

この問いに挑み続けるために。

 

 

彼ら/彼女らが「今」必要としていること

映画の冒頭で語られる言葉に、すべてが詰まっています。

 

開発援助を語るとき、考えるべきは、力を誰が持っていて、本来、誰が持つべきかです 

 

・・・・・・

 

まさに今、観るべき映画でした。

実際に現場で支援活動に従事している者として、ひとつひとつの言葉がぐさっと胸に刺さる感覚。

 

 

「誰のためのプロジェクトなのか」

 

改めて「支援/援助のあり方」について考え直す、良い機会となりました。

この視点は常に頭に置いておかないと、おかしなことになってしまう。というか、すでにいくつかの組織、地域ではおかしくなってしまっているようです。

 

何かを始めるということは、同時に、それを終えようとすること。「支援」を始めるのならば、それを終えても良い(援助関係者が撤退しても、現地の人たちが生活を維持していける)状況をつくっていく視点を忘れてはならない。

大事なのは「引き際の見極め」なのかなあと、『ポバティー・インク』を観ていて強く思わされました。

 

 

まとめ 

全編を通して「決して援助自体を批判するものではない」という姿勢が一環としてとられています。問題なのは、そのやり方。

つまり、関係者らによるこれまでの「押し付け援助」です。

 

とはいえ、作品の中では援助に対する批判的なコメントがかなり連ねられています。

 

援助すればするほど、さらに援助が必要になります

 

援助で発展した国などありません

 

 

これらには枕詞として、「これまでのやり方による押し付けの」というのを頭の中で付け加えて観ていただきたいです。

 

繰り返しますが、決して人の善意からくる行動を否定するような映画ではありません。

 

 

ただ、外から介入していくわたしたち(援助関係者)は、特に注意が必要です。

たとえ自分自身が意図せずとも、現地の社会には何かしらのネガティヴ・インパクトも与えてしまっている可能性があるのです。

 

 

「誰のための支援/援助なのか」

「誰のためのプロジェクトなのか」

 

これだけは忘れないでおきましょう。

 

 

 

断言できます。

『ポバティー・インク』は、国際協力に関わっている、関わりたいと考えているすべての人が観るべき映画です。

 

 

彼ら彼女らは決して、一生支援が必要な「貧しくて、かわいそうな人たち」なんかじゃないんです。

 

 

エンディングソングが終わった後の15秒を確実に見逃さないようにしてください。とても大事なメッセージが込められています。 ※2018年1月11日時点、一時的に在庫切れのようです。

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 活動を通して、村の人たちから学ぶことは山ほどあります。www.yukinobuoka.com