こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。
忙しい日々を過ごしていると、心がいっぱいいっぱいになってしまうこと、ありませんか?
学校の講義や課題・部活動、会社での仕事や家事・育児、あるいは所属先におけるややこしい人間関係などなど。。
頭では分かっているつもりでも、そんなあれこれが目の前に山積みになってしまうと、つい、心から余裕が失われてしまうことがあります。
その状態を、対象と視点との距離で表すなら、「かなり近く」で物事を捉えている状態だと言えるでしょう。目前のことに集中するあまり、それ以外のことに目がいかない、心がまわらない。。頭の中の柔軟性なんかも欠如していってしまうかもしれません。
そこで、視点をより遠くに持っていく、心のバランスをとる力を持っている1冊の本、日髙敏隆著『世界を、こんなふうに見てごらん (集英社文庫)』をご紹介します。
動物行動学者である著者の日髙さんが、虫をはじめとする生物たちの行動観察を通して、人間にとっての世界の見え方や、人生に対しての考えなどを説いたような本です。
かの有名なコピーライーター 糸井重里氏は本著の帯にてこのようにコメントしています。
まず、まえがきだけ読んで見てください。
たった21行なのですが、ここには著者の思いと方法が凝縮されています。いい本です。
力が入ってないのに力をもらえます。(糸井重里氏)
本当にその通りでした。全体を通して、著者のあたたく優しい、自然な言葉が散りばめられています。
それでいて、読み終えると「力」が湧いてくる気がします。この力は、筋力のような硬い質のものではなくて、どちらかというと、柔軟な対応力や受容力といった柔らかい質の力です。
一見複雑で重たそうな、人間界という不思議な世界や、死「デッド(dead)」というトピックに対して、「イリュージョン」や「ダニの見ている世界」など著者特有の引き出しからくる情報と共に、軽やかな言葉で説明がなされていきます。
たくさんの大事な要素がある中、特に印象に残っているのは、生物多様性がなぜ重要なのか、という問いに対する著者の考えが書かれている箇所です。
生態系の豊かさが失われると人間の食べものもなくなります。食べものも、もとは全部いきもので、人間がそれを一から作れるわけではないのですから、いろんなものがいなければいけないのです、と。
・・・ほんとうは、あらゆるいきものにはそれぞれに生きる理由があるからだと思っている。
・・・だからこそ動物学では、海の底のいきものも人間も、どちらが進化していてどちらが上、という発想をしない。
・・・いきものは全部、いろいろあるんだな、あっていいんだな、ということになる。つまりそれが、生物多様性ということなのだと思う。
(89-90ページ)
結局、そういうことなんだと思います。あれこれ難しく考えるのも楽しいですし、大事なことではあります。
でも、一方で本著のようなゆるい、柔軟な考えを持つことも大事だと思います。
要は、バランスをとることに尽きるのかなあ、と。
本著では一貫して、「つきつめない」ことの大切さや、ある種のいいかげんさを常に持っておくことの必要性が説かれています。
その点で、今回ご紹介した書籍は、対象と視点との距離に関してバランスを保つには、すごく「力」のある言葉が並んでいると言えます。
心に余裕のなくなってきている方や、つい頭で考えすぎてしまう方、頑張りすぎてしまう方に、ぜひ読んでいただきたいです。
いろいろあって、いいんです。