新卒NGO職員がゆく。|延岡由規のブログ

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カンボジア事業紹介「自分たちの未来は自分たちの手で」

 

こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

 

学生時代に本格的に「国際協力」に携わり始め、インターンシップ・フェローシップとしてお世話になった認定NPO法人テラ・ルネッサンスの職員として、私は現在カンボジアに滞在しております。

テラ・ルネッサンスは「すべての生命が安心して生活できる社会(=世界平和)の実現」をヴィジョンに掲げて、「地雷」「小型武器」「子ども兵」という3つの問題の根本的な解決を目指し、国内外における「平和教育」に専門的に取り組む国際協力NGOです。

前回の記事にて、私が最も深く関わっている「地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援プロジェクト」についてご紹介しました。今回はまた別のプロジェクトについてご紹介したいと思います。東南アジアやカンボジアにご関心がある方や、国際協力にご関心のある学生・社会人の方に、日本に拠点を置く国際協力NGOのいち活動事例としてお伝えできたらと思います。

 

その前に

現在テラ・ルネッサンスのカンボジア事業は主に3つのプロジェクトで成り立っています。

①地雷撤去支援プロジェクト

②地雷埋設地域村落開発支援プロジェクト

③地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援プロジェクト

上記のうち、今回は②地雷埋設地域村落開発支援についてご紹介します。あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、JICA(独立行政法人 国際協力機構)によるボランティア制度 青年海外協力隊に「コミュニティ開発」という最も人気の高いと言える職種があります。これ、以前は「村落開発普及員」という言葉を使っていたようです。

そのため「国際協力 村落開発」なんかのキーワードでネット検索してみると、関連書籍や論文、協力隊の方のブログなど、たくさんの情報にアクセスすることができます。ぜひ、お試しください。

 

カンボジアが抱える課題

これは、もう一度書いても良いのですが、ほぼ同じ内容になってしまいますので、前回記事をご参照いただきたいと思います。

www.yukinobuoka.com

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上述した「地雷」「小型武器」「子ども兵」という3つの課題のうち、特に「地雷」の問題がカンボジアではメインになっていると捉えています。とはいえ、それが全てというわけではありません。

カンボジアでは、1975年4月17日にポル・ポト率いるクメール・ルージュが首都プノンペンを制圧した後、1979年1月7日までの約3年9ヶ月の間に悪夢のような大虐殺が行われました。その際に、クメール・ルージュは多くの少年兵を使用したことが確認されています。

時代が前後しますが、1960年代後半以降に勃発したベトナム戦争に巻き込まれて以来、約30年以上に渡る戦闘状態が続いたカンボジアは、各派によって大量の地雷が使用され、その埋設密度は世界一であると言われています。

一度埋められたら、その効力は50年以上は続くとも言われている地雷。その恒久性も「悪魔の兵器」と呼ばれる所以です。撤去がなされるか、誰かが踏んで爆発しない限り、地雷は埋められた場所に眠り続けるのです。

ポル・ポトはこの地雷に関して

「眠ることもなく、無限の忍耐力を持つ地雷は、完璧な兵士である」 

と発言したとも言われています。

(参考記事:Long after war ends, landmines continue to pose a threat | TRT World

地雷原見学の際に発見された地雷 photo by Yuki Nobuoka

地雷原見学の際に発見された地雷 photo by Yuki Nobuoka

カンボジア地雷対策・被害者支援機関(C.M.A.A:Cambodian Mine Action and Victim Assistance Authority)の報告書によると、1979年~2016年の間、地雷や爆発性戦争残存物による被害者は、報告されているだけで合計64,662名に上り、その約20%は女性と子どもです。地雷撤去の推進や、地雷に関する啓発教育によってピーク時に比べて地雷事故の被害者数は減少しているものの、未だ解決されていないのが事実です。

ここで皆さんにご理解いただきたいのは、地雷は過去の問題ではなく、「現在進行形」の問題のひとつであるということです。

 

村落開発という支援

私たちが活動をしている、カンボジアの北西部は最後まで戦場となった場所であり、大量の地雷が埋設されました。2017年度現在、協力団体であるイギリス発祥の地雷撤去団体MAG(Mines Advisory Group)によって、当該地域内で指定された生活圏内の地雷撤去が完了した3ヶ村を対象に、テラ・ルネッサンスでは住民参加型の村落開発支援を実施しています。

多くの農家の人たちは、その収入を換金作物栽培のみに頼っています。2年ほど前から買取価格が下落し、借金に借金を重ねる人も少なくありません。2015年までは1kg=7〜8バーツ(≒25円)だったキャッサバの買取価格が、2015年以降は1kg=3〜4バーツ(≒12円)ほどに下がっています。

乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

また、土地を持たない人の多くはその日の食べ物を手に入れるために、日雇い労働をする以外に現金収入を得る手立てがありません。出稼ぎや日雇い労働に、自らの子ども達を連れて一緒に働きに行く人もいます。子供も、小学校高学年ぐらいになると立派な労働力としてみなされるのです。

それは、その子達が教育を受ける機会を損失していることを意味します。経済的な理由によって十分に教育を受けることができなかった子ども達は大人になった時、ある一定の収入を得られる仕事に就くことが難しく、自分の子どもを連れて日雇い労働に出かけます。

この連鎖がなかなか断ち切れないでいるのです。

すべての家族がそうとは言えませんが、対象地域のひとつであるロカブッス村では小学校に入学した子ども達の卒業率は15%ほどです。これは他の農村地域にも当てはまることでしょう。

以前の記事でも書いた通り、最終的に村に住み、村の運営を行なっていくのは村人たちです。私たちがやるべきことはその環境を整えることです。具体的には、村人達による月例自治会の開催をサポートし、家庭菜園の推進や家畜・有用昆虫の飼育などを通した収入向上支援、並びに教育施設の建設・整備や小学校での補習授業の実施等による基礎教育支援を行なっています。

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ロカブッス村 自治会の様子 photo by Yuki Nobuoka

 

「自立と自治」の促進

「自立」「自治」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?

自立という言葉を辞書で引くと、「他への従属から離れて独り立ちすること」とあります。しかし、テラ・ルネッサンスが考える自立とは、周りから自分を切り離して、独りで立つこと(独立)とは違うものだと捉えています。むしろ、周囲との関係性の中で自らの力で自分らしく生きることだと考えています。

自治については、自分の将来や地域の課題、国の未来について主体的に取り組む「責任と権限」を持つことだと捉えています。自らが変革の主体者として、社会の課題に関心を持つことが、自治への第一歩だと考えています。

これらを促進していくことが、最終的には自らの家庭を、村を、国を、そして世界を、自らの手でつくっていくことに繋がります。

そして私たちは、こう信じています。

 

 

「ひとり一人に未来をつくる力がある」と。

 

  

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