新卒NGO職員がゆく。|延岡由規のブログ

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ミツバチの奥深さ-養蜂技術研修のまとめその1

 

こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

 

先日、私が滞在しているカンボジア王国バッタンバン州から隣国タイに、プロジェクトメンバーと研修へ行ってきました。その際に、カンボジアでは感じなかったこと、タイに行って感じたことを前回の記事で紹介しています。

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私が働いている、認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業では、地雷撤去後の地域における村落開発支援や、地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援等を行っています。

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「地雷撤去後の地域」という表現に関して

ある土地から地雷が完全になくなったと判断するのは非常に難しく、ここでは「地雷原として指定されている場所の地雷除去は終わったが、指定されていない区域に地雷が無いとは言い切れない」ことを、敢えて書かせていただきます。

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今回は、後者の障害者家族の生計向上支援事業の一環で行う、ハリナシミツバチの養蜂技術・蜂蜜の製品化に関する研修を受けました。プロジェクトに関わるメンバーと、タイ語-クメール語の通訳と計10名で、タイのチャンタブリ県農業職業促進開発センターにて、2泊3日で受けた研修の内容や様子などをお伝えします。

国際協力と養蜂と、何がつながっているのか。あるいは、生計向上支援のひとつの方法として、養蜂という選択肢があるということを、少しでもお分りいただけたらと思います。

ハリナシミツバチに関する座学研修の様子 photo by Yuki Nobuoka

(ハリナシミツバチに関する座学研修の様子 photo by Yuki Nobuoka)

養蜂には2種類ある

皆さん、世界の養蜂産業には2種類あることをご存知でしょうか?

ひとつは、今皆さんの頭の中に思い浮かんでいるそれです。ミツバチです。

ミツバチ類を育てて蜂蜜を採る養蜂は"Apiculture"と呼ばれます。ミツバチはその種類が少なく、オオミツバチ、コミツバチ、セイヨウミツバチ、そしてニホンミツバチを含むトウヨウミツバチと、大きく4種類に分けられます。

 

そして、もうひとつが私たちのプロジェクトでも採り入れるハリナシミツバチ類の養蜂です。ハリナシミツバチは英語で"stingless bee"と言い、その名の通り針を持たないのです。このハリナシミツバチ類を育てる養蜂を"Meliponiculture"と呼びます。

ハリナシミツバチはその生態に従って種分化が激しく、現在400種類以上が世界に生息しています。ちなみに、研修で訪れたタイでは、30種類以上の生息が確認されています。

花にとまるハリナシミツバチ photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス

(花にとまるハリナシミツバチ photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

進化の過程で針を退化

皆さんもご存知の通り、ミツバチは針を持っています。針を持っているハチは、実はメスだけなんです。ハチの持つ針は、卵を産むための産卵管、あるいはそれが変化したものだからです。人を刺すアシナガバチやスズメバチ、ミツバチなどは社会性昆虫と呼ばれ、自分たちの巣を脅かすものに対して針を使って刺しにいくそうです。

私も2年前に、テラ・ルネッサンスの事業地のひとつであるアフリカ ブルンジ共和国を訪れた際に、ミツバチに刺されました。ここでも対象地域に暮らす村人たちの収入源を多様化させることを目標に、養蜂を行なっています。採蜜の様子を見学しに行き、養蜂箱の近くで写真を撮っていると、防護服を来ていたにもかかわらず1匹が中に入り、あごのあたりを刺されてしまったのです。結構ちくっときました。

見学後すぐに、ブルンジ人職員に針を抜いてもらったのですが、同行していた日本人職員に「腫れるよ〜」と言われ、どれだけ腫れるのか少し怯えていました。しかし、翌日になっても全く腫れることはなく、ブルンジ人職員からはこう言われました。

「髭のおかげで、ミツバチも上手く刺せなかったのだろう。ハハハ

この時ほど、あご髭を伸ばしていて良かったと思ったことは、後にも先にもありません。

2015年9月 ブルンジの事業地で養蜂を見学する筆者

(2015年9月 ブルンジの事業地で養蜂を見学する筆者)

 

脱線してしまいましたが、ミツバチが針を持っている目的のひとつは、巣を守るために敵を攻撃することです。

一方、ハリナシミツバチには針がありません。それは、巣の防衛を放棄したという意味ではなく、針が必要ではなくなったからです。

どういうことかと言うと、針を使って敵を刺すのではなく、例えば刺激物を吐き出したり、そもそも巣の入り口を隠したり、抗菌性の高いプロポリスで巣を作ったりと種によって異なるのですが、針の要らない防御方法を確立していったのです。そのため、針は進化の過程において退化したと考えられています。

その代わりと言ってはなんですが、採蜜や分蜂(巣を分ける作業)の際に巣箱を荒らそうとすると時々噛んできます。ハリナシミツバチにとっては精一杯の力を振り絞って噛んでくるのでしょうが、何ぶん、ハエぐらいの体の大きさなのでその力は微々たるものであり、痛いと感じるレベルではありませんでした。

ミツバチ類の養蜂を行う際には刺される心配があるために、針が通らない程度に分厚い防護服が必須となります。それに、養蜂を行なっている地点の周辺に住む人たちは、ミツバチに刺される危険性がゼロではありません。(普通にしていたら基本的には刺されません)

しかし、そもそも針を持たないハリナシミツバチ類の養蜂には、そんなに大掛かりな防護服は必要ありません。実際に、研修で訪問した農家の方は、薄手のナイロンパーカーを着て作業を行なっていました。

タイ チャンタブリ県のハリナシミツバチ養蜂農家 photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス

(タイ チャンタブリ県のハリナシミツバチ養蜂農家 photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

つまり、針に刺されない安全性というのが、ハリナシミツバチの養蜂を行うメリットのひとつなのです。

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自然界って本当に興味深いですよね。

(人が入って研究がなされている時点で、どこまで「自然」であるかはなんとも言えませんが)

次回も引き続き、タイでの養蜂技術研修のまとめを書いていますので、蜂蜜好きの方はぜひ、ご一読ください。

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