新卒NGO職員がゆく。|延岡由規のブログ

気にしていたいのはいつだって、世間よりも「世界」だ

タイで感じた「肥満」の危機。

 

こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

 

先週末の土曜日から2泊3日でお隣の国 タイに研修に行ってきました。現在携わっているプロジェクトにおいて、日本ではあまり馴染みのないハリナシミツバチの養蜂をするため、タイのチャンタブリ県農業職業促進開発センターに行ってきたのです。(研修の様子やプロジェクトについては、またブログにてお伝えします)

 

私が働く認定NPO法人テラ・ルネッサンスの事業地は、カンボジアの中でも北西部に位置する、バッタンバン州というところです。

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見ての通り、タイの国境付近にあり、車で2時間ほど西へ走ればタイに行くことができちゃいます。しかし、ここの国境を超えるのは少し面倒くさく、カンボジア人スタッフやカウンターパート団体の職員を含め、合計10人での国境越えには少し時間がかかりました。

 

旅行先としても人気のこの2ヶ国。たくさんのバックパッカーが国境を陸路で超えてきたことでしょう。一般的な陸路でのルートは、アランヤプラテート(タイ)〜ポイペト(カンボジア)です。ここは利用者も多く、最もぼったくられやすいという悪名高いルートでもあります。私はこれまで3回ほど通ったことがありますが、特に変なことにはなりませんでした。おそらく、普通にしていれば大丈夫です。

 

今回の研修にあたって使用したルートは、少数派であろうダウン(Daung、カンボジア)ーバンレム(Ban Laem、タイ)ルートです。イミグレの前ではたくさんの机が置かれ何やら忙しなく、ひたすらパスポートを見ながら手を動かしている人たちが座っています。

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旅慣れた方ならご存知かと思いますが、カンボジアからタイに入る際にも出入国カードを書く必要があります。ここの国境では、そのカードを自分で書かせてもらえないのです。カードなんてパスポート番号や滞在の情報を記入するだけで、初めての人でも誰かに聞けば自分で書けるにも関わらず、そのカード記入を代行するというビジネスが成り立っているのです。ちなみに、カンボジア人価格で1人120バーツ(約400円)でした。日本人ならもう少し値段が上がるかもしれません。

 

 

そんなこんなで無事にタイに入国して目に入ったのが、久しぶりにのセブンイレブン。

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カンボジアにも進出の表明はされているものの、未だその動きはありません。しかし、カンボジアの国境から100メートルほど歩けば、当たり前のようにあるセブンイレブン。さすが、日本に次いで世界で第2位の店舗数を誇る国です。街を少し移動すると、日本で見るのと同じぐらいの頻度で見つけることができます。

セブン‐イレブン店舗数6万店に 1位日本、2位タイ | newsclip (ニュース、ASEAN、その他のニュース)

 

 

2016年のGDP成長率は前年比3.2%増(日本は1.2%)と、世界銀行の定義による「中進国」として継続的に経済発展を遂げているタイですが、必ずしもその影響は良いものばかりではありません。環境問題や格差拡大など、経済発展に伴う問題も明るみに出てきています。

 

中でも、私が先日のタイ研修に行った際に感じたのは「肥満問題」です。その肥満具合が、ちょっとぽっちゃりなんて可愛いものではなかったのです。

 

 

糖尿病はじめ、様々な生活習慣病の原因である肥満は、世界保健機関(WHO:World Health Organization)も世界的な健康上の問題として、対策に勤しんでいます。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)』においては、アメリカにおける肥満(特に児童)の背景には貧困問題があることが指摘されていますが、タイでは少し文脈が異なるようです。

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ (岩波新書)

 

 

 

WHOによると成人男女は、BMI25以上が「太り過ぎ(overweight)」、BMI30以上が「肥満(obesity)」と定義されます。(ネット上ではこれらの言葉が厳密に使い分けられていないため、少し情報が錯綜している感が否めません。。)

 

タイはASEAN諸国でインドネシアに次ぐ2番目の肥満率を記録し、2015年には糖尿病患者が400万人に上ったと報告されています。生活習慣病、肥満について国レベルで問題視されているのですが、特にお坊さんたちに蔓延している「太り過ぎ」は大きな問題となっているようです。

 

タイもカンボジア同様、上座部(小乗)仏教の国なので、お坊さんは修行を積んでいて質素な食生活を送っているというイメージがあります。しかし、バンコクにあるチュラーロンコーン大学の研究結果によると、太り過ぎと判断された僧侶は48%にも上ったそうです。びっくりですよね、タイではお坊さんの2人に1人が太り過ぎだなんて。。

その原因のひとつは、やはり食生活にあるようです。

www.mag2.com

 

タイ人の1日あたりの砂糖摂取量はティースプーン約25杯分という、驚くべきほどの砂糖消費大国でもあります。加えて、ここ数年の間に国の経済発展に伴い、外国資本のファストフード店舗数が急激に増えてきたのも、肥満問題を加速させているひとつの要因でしょう。

同時に、情報のグローバリゼーションも急進し、いわゆる「先進国」のライフスタイルにインターネットやSNSを通じて触れる機会が増え、憧れを抱く人が多数いるのも想像できます。その結果、これまでとは比べ物にならないほどの糖分、塩分の摂取をしていることでしょう。

 

体重が増えること自体を悪いとは思ってはいません。その結果として、国をより良くする機会が奪われていることが問題なのです。

実際に、上記の記事によると、糖尿病を含む肥満が原因で生じた病気に対処するためにタイ政府が支払った医療費は2012年だけで約9500万円以上です。

 

これだけのお金を他のこと(国民の社会保障や教育分野等)に使うことができれば。。

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この「肥満問題」を通して、ヒトは何をやっているんだろうというのが率直な感想ですね。自分たちで問題を作り出して、自分たちでそれによる害を被って、自分たちでそれを解決するために新たな問題を作り出して。。

問題を起こした後に慌てて対処を考える。

そうすると、問題に対処することが「目的」になってしまい、問題の根本的な解決にはなかなか目が向かない。

 

これって「紛争」や「貧困」「環境破壊」など、世界平和を妨げている問題すべてに通じるんですよね。

 

結局、自分たちで自分たちの首を締めて。

自分たちの未来の世代に大きな大きな問題を残していって。

根本的な問題解決のためにできることを考えて、行動を起こす人がもっと増えていかないと。

 

 

とにかく、何としても今の体型を維持しようと、改めて決意をしたタイ研修でした。(研修での学びはそれだけではありませんのでご心配なく)

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www.yukinobuoka.com

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)

ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書)