新卒NGO職員がゆく。|延岡由規のブログ

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「風土」から考える国際協力。

 

こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

 

日本はゴールデンウィーク真っ只中ですね。今年は4/29(土)昭和の日から始まり、最大9連休のお休みを取られている方もいらっしゃるのでしょうか。

まずは皆さま、新年度が始まって1ヶ月、お疲れ様でした!

この連休を生かして家族や友人、恋人との大切な時間をお過ごしください。それから、1人気の向くままのお時間を楽しまれてください。

カンボジアではもちろん、日本のゴールデンウィークなど無関係に日常が動いています。しかし、5/13~15はノロドム・シハモニ国王の誕生日という国民の祝日があります。なんと、3日間も誕生日があるのです!さすが王様。。

さて、ゴールデンウィークといえば旅行ですよね。まとまったお休みを活用して、どこに行っても人が多いのを承知の上でも、旅行に行きたくなるのが人間の性ってものです。先月、大手旅行会社のJTBさんが発表していたGW旅行動向調査によると、今年のGW期間中の海外旅行者数は59万5000人、国内旅行者数は2300万人の予想です。

これだけの人がGWに移動していると思うと、少しぞっとしますよね。。そりゃあ、新幹線も飛行機もチケットが取れないわけですよ。。

たくさんの人が様々な場所を訪れ、旅行業界の繁忙期であるこのGWに、「風土」という言葉から国際協力のあり方について、少し考えてみたいと思います。

「風の人」「土の人」

2014年9月に安倍首相が記者会見で発表した地方創生政策によって、日本国内に地方創生という考え方が浸透しました。都会に生まれ育ち、都心で就職した人が、地方に移住して働く「Iターン」や、就職や進学の際に地元から都心に出た後、再び地元に戻って働くという「Uターン」のような働き方も注目を浴び、地域活性化や地域づくりも今では耳慣れた言葉になりましたね。

また、8年前から総務省のバックアップで制度化された地域おこし協力隊なんかもありますね。私は割と、この地域おこし協力隊も面白そうな生き方だと思い、一時期本気でやってみたいと思っていました。

地域で働くという視点のもとで海外に目を移すと、独立行政法人国際協力機構(JICA)による青年海外協力隊なんかもあります。これは、2年間途上国に派遣され、その地で生活しながらボランティアを行う制度です。国際協力への入り口として最も有名であり、人気のあるものだと思います。

また、近年では、徐々にアジアやアフリカを支援の対象ではなく、ビジネスのパートナーとして見なし、「途上国」と呼ばれてきた国々で起業する日本人も多くいらっしゃいます。

このような風潮の中で脚光を浴びてきたのが「風の人」と「土の人」という言葉です。ある程度イメージがつくかと思いますが、念のために。

一般的に、「土の人」とは、その土地に根付いて、これまでの文化や伝統を受け継いでゆく人を指します。一方、「風の人」とは、外からやって来る人を指します。つまり、GWには家を離れて約2360万もの人が風の人となるのです。

「土の人」はその地域を支えていく上で重要な存在であることは間違いないのですが、国内外問わず地域が抱えている様々な問題を解決していくためには、「土の人」だけではどうしても新たな発想が生まれにくいという側面があります。そこで、「風の人」の存在が重要性を帯びてくるのです。

この人たちは地域に新たな発想・視点を持ち込み、普段の生活では見えづらい「土」に埋もれている財産を発掘することに長けています。その財産を発掘するためにはそもそも、「土の人」の存在が前提にあることを想像するのはそう難しくありません。

良い「風土」を形成するためには、上記のどちらも重要であり、どちらも欠けてはならないのです。

国際援助の本質

私は現在、国際協力NGOの職員としてカンボジアに滞在しております。学生時代には、アフリカのウガンダ共和国に計6ヶ月間滞在し、元子ども兵の社会復帰支援に携わりました。また、大学2年生の春休みにバックパックを背負ってうろうろした期間も入れると、これまでのカンボジア歴は合計約5ヶ月です。

しかし、現地の言葉で日常会話が成り立つかと言われると、そこまでの語学力はまだついていませんし、気候や文化に関しても勉強中です。「土の人」の知識にはまだまだ及びません。やはり23年間、日本で育った私がこちらで「土の人」になれるとは到底思えません。ウガンダの人にとっても、カンボジアの人にとっても、私は「風の人」なのです。

では、国際協力において「風の人」にできることはなんでしょう。

それは、端的に表すと「土の人」の内側に眠っている力を発揮できる環境を整備することです。「風の人」はあくまでも「風」であり、いつその地域からいなくなるか分かりません。実際に、資金不足等の理由によって、想定外のタイミングで現地からの撤退を余儀なくされる組織もあります。その場所で最終的に生きていくのは「土の人」なのです。

そこを履き違えて、「風の人」に依存させるシステムづくりに勤しむ「援助」団体が世界にはあまりにも多く、「貧困産業」や「貧困援助ビジネス」というものがつくり上げられています。これは昨年、日本でも公開となった映画『ポバティー・インク-あなたの寄付の不都合な真実』で痛烈に批判されています。もちろん、全てがそうとは言いませんが、こういう見方もできるということです。

この根本にある問題のひとつは、「土の人」は何も知らないから、私たち「風の人」が教えてあげましょう、という「風の人」たちの傲慢な考え方にあります。

忘れてはならないのは、「土」のことを誰よりも知っているのは「土の人」だと自覚することです。「風の人」がいくら机上で勉学に励もうと、「土の人」の生活体験には及ばないのです。にもかかわらず、「かわいそうな人たちに、問題の解決方法を教えてあげましょう」というスタンスで「風の人」が入り、「援助」を行います。短期的に成果が出たとしても、彼らがいなくなった後、そのような「援助」を受けた「土の人」には何が残るでしょうか。

私は現場での経験を通してたくさんのことを学ばせていただきました。中でも、「風の人」にできること、やるべきことが何なのか、はとても大きな学びでした。社会復帰の主人公はあくまでも「元子ども兵」であるし、地雷撤去後の村落開発支援の主人公はあくまでも「村の住民」です。私たちのような援助関係者がやるべきことは、彼ら彼女らに内在する力が発揮できる環境を整えることなのです。

この「当たり前」のことを頭では分かっていても、本当の意味で理解するのには私自身、時間がかかりました。だからこそ、このことをより多くの方に、できるだけ早い段階で気付いていただきたいのです。

国際協力に従事する(そうでない方々も)、より多くの人がこの自覚を持てば、この世界はもう少し速いスピードで良くなっていくのではないでしょうか。

 

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