こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。
このブログの中でよく出てくる単語のひとつが「子ども兵」です。この問題を知ったことをきっかけに、私は国際協力への道へと歩み始めました。
今となっては当たり前のように使っている「子ども兵」という言葉ですが、大学2年生になるまでは私自身、全く知りませんでした。
最近だと、ISや南スーダンにおける子ども兵の使用がメディアに取り上げられているので、耳にしたことがある方は多いかもしれません。また、2015年3月に公開された映画『風に立つライオン』でも子ども兵の様子が描かれていたので、以前に比べると社会における認知度は上がっているといえるかもしれません。
そんな「子ども兵」について、アフリカ ウガンダ北部に半年間滞在し、元子ども兵の社会復帰支援に携わった私が3つの数字で解説します。
国際協力初心者の方でも、この記事を読み終えたあなたはきっと、大学2年生当時の私とは比べ物にならないぐらい「子ども兵」問題に関する知識がついているでしょう。
その前にひとつだけ質問です。
「子ども兵」と聞いて、どんな人を思い浮かべますか?
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そもそも、子ども兵とは誰のことを指すのでしょうか。国連文書などに広く用いられている定義は、『ケープタウン原則(Cape Town Princiles and Best Practices)』に示されている、以下のものです。
正規、非正規を問わず、あらゆる軍隊における18歳未満の子どものこと。
(『ケープタウン原則』より翻訳)
つまり、18歳未満であれば軍隊に所属するいかなる者も「子ども兵」であるということです。戦闘行為に直接的に参加していようが、政府軍あるいは反政府軍の裏方で大人兵士の世話係をしていようが、軍隊における18歳未満の者を「子ども兵」とします。
子ども兵の最低年齢に関してはいくつかの国際法によって差異があり、一律に明確な設定がなされていないのが事実としてあります。1989年に国連で採択された『児童の権利に関する条約(子どもの権利条約)』によると、「児童とは、18歳未満のすべての者」を指します。本条約は南スーダン、次いで2015年10月にソマリアが批准したことで、アメリカ合衆国を除く世界196ヶ国が締約している条約です。このことからこの条約は、子どもの権利に関する国際社会の考えを最もよく表すものだと言えます。
したがって、「子ども」=「18歳未満のすべての者」であり、そのうちの「軍隊に所属する者」=「子ども兵」なのです。
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諸説ありますが、世界には25万人以上の子ども兵が存在するとされています。ここで重要なポイントは、その正確な数は誰にも分からないという点です。その主な理由は以下の4つです。
1. 死亡率が高い。
子ども兵は戦闘の最前線で「弾除け」として、あるいは地雷原にて「地雷除去装置」として、大人兵士に使用されることが多くあります。自分の身を守るために、子ども兵は大人兵士によって優先的に危険地帯へと送られるため、死亡率が高く、いつ誰が命を落としたのか、その数を記録するのは困難を極めます。
2. 外見での区別が困難である。
これはある種、すごく単純な理由です。背丈や顔つきなどの身体的特徴だけで、その人物が18歳以上の大人兵士なのか、18歳未満の子ども兵なのか判断するのが難しく、子ども兵の正確な数が分からないのです。
3. 出生証明書がない
子ども兵が存在する地域では社会経済的に不安定な場所が多く、日本のようにきちんとした出生証明書がありません。つまり、自分の正確な誕生日が分からないのです。そのため実際の年齢が本人にとっても不明であり、子どもなのか大人なのかが判断できません。
4. 軍隊の兵士が子ども兵の存在を隠す
子ども兵の使用は戦争犯罪です。国際刑事裁判所規定(ICC規定)によって明記されています。それを承知の上で子どもを徴用し、戦闘へ参加させている軍隊の兵士が、果たして子ども兵の存在を認めるでしょうか。
これらの理由から、子ども兵はしばしば「見えない兵士(Invisible Soldiers / Children)」と称されます。
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上述した『ケープタウン原則』による子ども兵の定義には、実は続きがあるのです。
正規、非正規を問わず、あらゆる軍隊における18歳未満の子どものこと。その子どもとは、調理係、荷物の運搬係、伝達係、さらに家族以外でこのような勢力に同行する者すべてを含み、この定義には性的搾取や結婚を目的として募られた少女も含む。よって、武器を所持した、あるいは所持していた子どもだけを指すものではない。
(『ケープタウン原則』より翻訳)
私も以前は「子ども兵=戦場の最前線で武器を持っている男の子」というイメージしか思い浮かべられませんでした。しかし、戦闘行為に直接参加する子ども以外の非戦闘員も「子ども兵」に含まれ、さらに少女もこれに該当するのです。実際に、現在世界にいるとされる25万人以上の子ども兵のうち、約40%が「少女兵」だと言われています。
少女兵の多くは軍の大人兵士の召使いとして身の回りの世話を強要されたり、男性兵士による性的暴力の対象となったりします。また、強制結婚によって男性兵士の「妻」となり、強制的な妊娠・出産を経験する少女兵が数多くいます。そのため、男性兵士との子どもを連れて帰還する元少女兵も多く、HIVに感染しているなどの身体的な傷、それから強制的な性的行為による精神的な傷を負っています。また、帰還後も近隣の人々から差別や偏見の対象となるなど、社会・経済的な要因によって、元少女兵は「社会復帰が最も困難な存在」だと言われています。
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いかがでしたか?国際法や条約の部分など、あまり書きすぎると収集がつかなくなってしまうのでほどほどで留めましたが、「子ども兵」について何となくでも、ご理解いただけたでしょうか。
世界では、あなたと同世代の子どもが、兵士として働かされているのです。
あなたのお子さん、お孫さんと同い年ぐらいの子どもが兵士として働かされているのです。
最後に、この記事を読み終えたあなたにひとつだけお願いがございます。
それは、この記事、あるいはこの記事を読んだ感想を、あなたの大事な方に共有していただきたいのです。
問題解決の第一歩は「知る」ことです。
問題は、人々に認識されなければ問題にさえなり得ないのです。
そして、大事な方に共有する時、こう伝えてください。
「あなたの大事な人に、この話を伝えてください」と。
この輪が同心円状に広がっていくことで、「子ども兵」の問題をもっともっと人々に広めていきたいのです。そして、解決に向けて行動を起こす人を増やしていきたいのです。
一歩でも、半歩でも前に進みましょう。
この記事を読んだあなたはもう、その円の中心に立てるはずなのですから。

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