4月4日は #国際地雷デー
カンボジアでは戦闘状態が終結して20年以上が経つが、当時埋められた地雷は今なお人々の生活を脅かし続けている。地雷/不発弾が1つ撤去されれば、確実に1つの事故を防ぐことになる
途方もない道のりかもしれないが、平和な世界に向けて着実に歩もうhttps://t.co/jSl9DKuJrK pic.twitter.com/lip2v99Shy
— 延岡 由規@カンボジア (@yuki_nobuoka) April 4, 2018
4月4日は「国際地雷デー」です。
正式名称は「地雷に関する啓発および地雷除去支援のための国際デー(International Day for Mine Awareness and Assistance in Mine Action)」
2005年12月8日、国連総会によって毎年4月4日を「国際地雷デー」とすることが宣言されました。その名前の通り、
・主に対人地雷に対する理解・関心を深めること
・地雷除去活動の支援を呼びかけること
を目的に、2006年の4月4日から制定されました。
当時の国連事務総長であったコフィー・アナン氏は、地雷という残虐兵器について次のように述べています。
たった1個の地雷が存在するだけで、いや、その存在の恐れがあるだけで、コミュニティ全体が人質となります。
(中略)
誰の耳にも、もうはっきりとしたメッセージが聞こえるはずです。文明社会に地雷が入り込む余地などないのです。
地雷原を示す標識 photo by Yuki Nobuoka
「悪魔の兵器」
地雷は、よく「悪魔の兵器」と称されます。その理由は主に以下の3つ。
1. 非人道性
ここでの「人道性」とは、国際人道法に照らし合わせたときのそれを指します。
国際人道法とは「戦争の手段や方法を帰省する原則や規制、それに文民、病人や負傷した戦闘員、戦争捕虜のような人々の人道的保護を扱った」国際法です。
つまり、国際的に定められたルールに則って行われる戦闘において、地雷は「非人道的」な武器であるのです。
一般的に用いる「人道」という言葉を思い浮かべた場合、そもそも武器自体が「人道的」なものではありませんから。
対人地雷は「人の命を奪うこと」ではなく、相手に怪我を負わせることを目的に作られたものが多いと言われます。爆発によってちょうど片手・片足が吹き飛ばされるぐらいの量に、火薬が調整されているものもあるのです。
単純に人の命を奪うよりも、怪我をした方が治療にかかるコスト、移動にかかる人的コストなど、敵軍により大きな損失を与えることができます。また、地雷によって四肢を失うこと、その姿を仲間兵士が見ることによる精神的なダメージも大きいものです。
2. 無差別性
地雷は、攻撃相手を選びません。
簡単に言ってしまうと、国際法に基づいた「戦争」において攻撃してもよいのは、軍事目標としての敵兵のみです。文民(=軍人でない人)を攻撃することは許されていません。しかし、地雷は攻撃対象を絞ることが難しく、子どもや女性をはじめとする一般市民にも被害が及んでいます。
実際、2017年12月に発表された地雷禁止国際キャンペーン(ICBL: International Campaign to Ban Landmines)による『ランドマインモニター 2017(Landmine Monitor 2017)』では、以下のように記されています。
・2016年の1年間に確認された、地雷やクラスター爆弾、その他不発弾による被害者数は8,605人
・被害者の大多数は市民であり、78%を占める
・そのうち、42%は子どもが被害を受けている
・全被害のうち、女性・女子によるものは16%を占める
3. 半永久性
一度地面に埋められた地雷が、地中からなくなる理由は主に2つです。
撤去作業が行われるか、誰かが爆発の被害に遭うか。
プラスチックの普及などによる武器の性質向上によって、製造段階で意図的に有効期限を短くしない限り、半永久的に威力を保ったまま地中に残り続けるのです。
カンボジアの武力闘争の歴史において、最も知られているクメール・ルージュの指導者 ポル・ポトは地雷に関してこのように発言したと言われています。
地雷は完璧な兵士である。決して眠ることもない。際限なく『そのとき』を待つことができるのだ。
参考:Long after war ends, landmines continue to pose a threat | TRT World
上述の『ランドマインモニター 2017』によると、2017年11月現在、世界で61の国と地域に対人地雷が残っているとされています。
100㎢以上の地雷原(対人地雷)が残っていると考えられているのは次の10カ国。
アフガニスタン/アンゴラ/アゼルバイジャン/ボスニア・ヘルツェゴビナ/カンボジア/チャド/クロアチア/イラク/タイ/トルコ
カンボジアにおける地雷
わたしが滞在しているカンボジアも、地雷の問題を抱えていることで世界的に認知度が高い国のひとつです。
カンボジア地雷対策・被害者支援機関(C.M.A.A:Cambodian Mine Action and Victim Assistance Authority)の報告書によると、当局が記録を保持している1979年から2017年12月の間、地雷/爆発性戦争残存物による被害者は計64,720人に上ります。
そのうち、18歳以下の子どもが占める割合は11.4%(7,425人)です。
C.M.A.A報告書より、筆者作成
最近5ヵ年で見ると、年間被害者数は減少傾向にあります。これは、撤去作業の進行や地雷/不発弾の回避教育が着実に成果をあげていると捉えることができます。
とは言え、問題が解決されたわけではありません。
地雷が撤去されて、命を脅かす危険から解放されたという点においては大きな前進です。しかし、もう少し包括的かつ長期的な視点で、自立した生活を確保するためには、やっとスタートラインに立てたようなものです。
特にわたしたちが活動をしているカンボジア北西部のタイ国境に位置するバッタンバン州は、内戦時代におびただしい数の地雷が埋設されました。
1984年後期に大量に地雷が埋められた、700㎞におよぶ「K5地雷ベルト」には、200~300万個の地雷が埋設されたと言われています。
カンボジア全土においては、推定400~600万個の地雷が埋設されたとされているので、この地域がどれほど大きな被害を受けてきたか(受けているか)は想像に難くありません。
地雷被害を乗り越えていく
そんな中、2017年4月からJICAによる草の根技術協力事業(パートナー型)というスキームで開始したのが、地雷被害者を含む「障がい者家族の生計向上支援」事業です。
事業名の通り、わたしたちが対象としているのは地雷事故をはじめとした、紛争被害によって障がいを負ってしまった方と、その家族100世帯です。片手・片足を失ってしまった人や、爆発によって片目が見えなくなってしまった人も数多くいます。
対象世帯はいずれも複数の収入源を持たず、外部環境によって変動する不安定な収入源しか持たない「脆弱」な生活環境下にあります。障がいを負っているために、この地域では多くの人が収入源としている出稼ぎ労働をするにしても、身体的に不利な状況の中、生活をしています。
でも、だからと言って「かわいそうな人」ではありません。
「何もできない人」なんかじゃ、決してありません。
事業を開始してから1年が経った今、徐々に活動による成果が見え始めています。以前の記事にも紹介した通り、生活面においても、あるいは気持ちの面においても変化が起き始めています。
特に、支出を減らすことを目標に推進してきた家庭菜園に関しては、対象世帯のうち97%が実践をしています。
各世帯を訪問してお話をしていると
「いまは市場に行っても野菜を買う必要がなくなった」
「栽培した野菜を食べきれなくて、ご近所さんに配っているよ」
なんて声もたくさん耳にします。
正直、ここまで高い割合で家庭菜園が実践されるとは思っていませんでした。おっちゃん、おばちゃんたちの「未来をつくる力」には、良い意味で裏切られました。
今なお、残り続ける地雷/不発弾による被害を受けながらも、懸命に日々を生きる人がたくさんいることをわたしは知っています。
一方で、2018年になった今なお、爆発性戦争残存物によって命を奪われる人がいること、明るい未来を奪われる子どもがたくさんいることも知っています。
4月4日「国際地雷デー」の今日、地雷という問題について改めて、一緒に考えてみませんか。
そして「今」わたしたちにできることを考え、行動に移してみませんか。
地雷、子ども兵をテーマに、当事者の複雑な人間心理が絶妙に描写された映画です。個人的に、何度も見たい作品のひとつです。