新卒NGO職員がゆく。

カンボジア駐在の新米"国際協力師"による、国際協力やキャリア等に関する一考察。

まずは自身の文化を尊重することから。


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こんにちは!新卒「国際協力師」の延岡由規(@yuki_nobuoka)です。

 

2017年4月より、認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事務所では、地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援事業を開始しました。これはJICA(独立行政法人 国際協力機構)による草の根技術協力事業(パートナー型)というスキームにて実施しています。カンボジア事業の中で、私が最もコミットしているプロジェクトでもあります。

この事業に関しては、以前のブログでその背景等を書いておりますので、ご参照ください。

www.yukinobuoka.com

 

単なる農業技術の提供による収入向上支援ではないのが、本事業の重要なポイントのひとつです。収入と支出、お金に関する考え方や、グローバル経済のネガティヴ・インパクトを知ることで、なぜ、私たちがやろうとしていることが「今」必要で、彼らにとってどのようなメリットがあるのかを分かってもらうことが、かなり大事になってきます。

その第一ステップとして、今週から対象100家族を4つのグループに分け、事業開始に伴うワークショップを実施しています。

何に関するワークショップかというと、

①グローバル経済のリスク

 ②お金の収支バランス の2つです。

ワークショップの様子 photo by Yuki Nobuoka

 ワークショップの様子 photo by Yuki Nobuoka

 

これらを、カンボジア駐在の職員 江角と、プロジェクト・コーディネーターのクン・チャイが村の人たちに伝えていきます。2回に渡って、このワークショップのエッセンスを紹介します。今回は①グローバル経済のリスクについてです。

 

単一作物栽培の危うさ

「世界がひとつ」になっている現代社会。カンボジアの農村地域も例外ではありません。現地にいて特に感じるのは、換金作物であるキャッサバやトウモロコシの買取価格の下落による経済的損失です。

私たちの活動地であるバッタバン州カムリエン郡では、特に熱帯・亜熱帯地域で栽培されるキャッサバの生産が盛んです。皆さんがお好きなタピオカの原料としても知られるキャッサバですが、カンボジアではこれを食べている人をほとんど見たことがありません。

アフリカではキャッサバを主食のひとつとして重宝しています。事実、私もウガンダに滞在していた時は、毎日のように食べていました。しかし、近年の科学技術の発達によって、工業用でんぷんとして、製紙やプラスチック、あるいはバイオエタノールの原料として利用されるなど、キャッサバはもはや単なる食物ではないのです。特に、カンボジアをはじめ、タイやベトナムにおいては、その主な用途は輸出用の家畜飼料やバイオエタノールの生成です。

キャッサバは、茎を地中に挿すだけで根が張り、そのまま生育するという栽培の容易さに加えて、作地面積あたりのカロリー生産量は他のイモ類・穀類よりも多く、生産効率は非常に高いと言えます。そのため、小規模農家の貴重な収入源としてキャッサバ生産は盛んになっていきました。

その地の土壌が貧しくなっていくなどの弊害はありますが、キャッサバ栽培によって現金収入を得られること自体を悪いとは思いません。問題は、広大な土地があるにも関わらず、キャッサバやトウモロコシなどの換金作物のみを栽培し、自給用作物を育てていないという点です。

カンボジアで生産されたキャッサバは、その多くが中国やタイなどの企業に買い取られています。現地のキャッサバ栽培農家の人たちから話を聞くと、2015年までは1kg=7~8バーツ(≒25円)だったキャッサバの買取価格が、2015年以降はその半額ほどにまで下がっているようです。

広大なキャッサバ畑 photo by Yuki Nobuoka

広大なキャッサバ畑 photo by Yuki Nobuoka

 

カンボジアの人たちは、この買取価格をコントロールすることができません。経済的に大きな力を持っている企業から提示された金額に従う以外、ないのです。

借金をして換金作物栽培に必要な土地や農機具、種子を入手し、栽培をしていた農家の人たちは、この買取価格下落によって大きなダメージを受けています。しかしながら、その他に収入を得る術がなく、翌年の換金作物栽培のために更に借金を重ねる人も少なくありません。中には、借金を返せるだけの収入が得られず、担保にしていた土地を取り上げられてしまう人もいます。

収入源をひとつだけに頼ってしまうとそれがだめになった場合、文字通り「どうしようもない」状況に陥ってしまいます。

このように、経済の自由化、グローバル化によって、カンボジアの元地雷原で生活をする人々も、確実に影響を受けています。

 

 

もちろん、ネガティヴな影響ばかりではありません。雇用機会の創出や、製品の低価格化、道路建設などのインフラ整備等、ポジティヴとも捉えられる影響もたくさんあります。

企業というものは(すべてとは言いませんが)綺麗な部分を見せるのが、とにかく上手だなあと常々感じている私ですが、カンボジアの人たちにとってもおそらくグローバル経済の綺麗な部分しか見えて(見せて)いないのでしょう。

 

 

伝統的な生活の持続可能性

カンボジアは以前は広大な熱帯雨林が広がっており、自然豊かな国として知られていました。しかし、1970年代後半に台頭したポル・ポト派によって森林は伐採されていきました。活動の資金源として森林を伐採し、隣国タイなどへ輸出することで外貨を獲得していたのです。また、近年の急進的な経済発展の裏側で、自然資源は大幅に減少しています。

独立行政法人 森林総合研究所 REDD 研究開発センターが2012年に発表した報告によると、1965年には73%であった森林率(国土面積に占める森林面積割合)が、1997年には59%まで減少し、近年は特に減少率が大きくなっています。

また、1990年から2010年にかけての森林面積の年間減少率は東南アジア各国で最も大きい国の1つと言えます。(参考:http://redd.ffpri.affrc.go.jp/information/trends/2012/_img/01_country_report_cambodia.pdf

 

経済的な理由によって、たくさんの森林が伐採され、もはや自然との共生は困難となっています。だからと言って、人間の経済活動が与える自然環境への影響を無視してはいけません。

経済の自由化に伴い、欧米や先進諸国などの様々なライフスタイルも流入してきました。例えば、以前だと、カンボジアの人たちは食べ物を持ち運ぶのにバナナの葉を使用していました。土に還るものしか使っていない時代には、「ごみ」を道端に捨てても大きな問題にはなりません。

しかし、今はプラスチックの袋です。放っておいたら溜まっていく一方です。このようなライフスタイルの変化もあり、カンボジアではごみ問題がかなり深刻だと感じます。

このように、持続可能な伝統的ライフスタイルが崩壊しつつあり、経済的にも自然環境にも影響を及ぼしていることは事実だと言えます。 

 

自信を持つこと

私たちのメッセージとしては、「まずは自分たちの文化やライフスタイルに自信を持つこと」を伝えています。

合う・合わないの問題はあると思いますが、どの文化が良い・悪いという判断はできません。いわゆる「途上国」の人たちは、「先進国=素晴らしい」「途上国=劣っている」という思い込みを、無意識のうちに、自分たちで創り上げてしまうことがしばしばあります。

大事なことは、無条件に他の文化を受容・批判するのではなく、他の文化から学ぶという姿勢です。

そして、そのためにもまずは、カンボジアの伝統的な生活や文化に対して、カンボジアの人たちがリスペクトを持つことが肝心です。

 

物事には必ず2つ以上の側面があり、良い部分だけを見て判断をすることは危険なことだと言えます。彼ら彼女らが行動を選択する材料のひとつとして、グローバル経済のリスクについて知る機会を私たちは提供しています。

 

持続可能な生活を送ってきた彼ら彼女らが、グローバル経済の荒波にうまく乗って、新たに持続可能なライフスタイルを確立できるよう、引き続き活動を展開していきたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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