新卒・NGO職員がゆく。

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新卒・NGO職員がゆく。

新米"国際協力師"による、国際協力やキャリア等に関する一考察。

カンボジアの「出稼ぎ事情」から考える。

カンボジアは、1960年代後半以降に起こったベトナム戦争に巻き込まれ、北ベトナムの重要な補給路であったホーチミン・ルートが通っていたラオスとともに、米軍による爆撃の対象となりました。

ベトナム戦争終結以降も、およそ30年以上に渡る戦闘状態が続き、各派各軍が大量の地雷を使用したことも知られています。

中でも、多くの地雷が埋設され、未だに撤去が完了していない農村地域に住む人々は、道路や水道などのインフラが整備されておらず、都市部に比べると社会経済的な「発展」から取り残されてしまっています。

そんな地域に住む人たちは、現金収入を得るために日雇い労働や、隣国 タイに出稼ぎに行く人が少なくありません。それによる子どもの教育機会への影響については、前回の記事で書きました。

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今回は、そんなカンボジア人による出稼ぎについて、それから、現場に来て改めて考えさせられているもやもやについて書いていきます。

 

妻はバンコクにいる

先日、地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援の一環で、対象者にインタビューをする機会がありました。プロジェクトなのでもちろん、終了時には評価をする必要があります。そのために、最低でもプロジェクト開始時における対象者の生活状況は知っておかなければいけません。

いくつかの家庭を訪問して話を聴いている時、地雷被害を受けたある男性の携帯電話が鳴りました。電話に出て2、3分ほど話した後、彼が言い出したのです。

「今の電話はタイにいる妻からだ」

訊くと、奥さんはタイの首都バンコクに出稼ぎに行っているそうです。

男性はこう続けました。

今週末にカンボジアに帰ってくるから、パスポートの更新の準備をしてほしいと言われた」

3ヶ月ぶりにカンボジアに帰ってくる奥さんは、パスポートの更新が終われば、またバンコクに戻って働きます。

奥さんだけでなく、13歳の息子さんもタイに出稼ぎに行っているとのことです。

 

カンボジア人の出稼ぎ

役所での手続きを踏んで、合法的に海外へ出稼ぎに行く人もいれば、不法入国によって就労をする人もいます。そのため、正確な数は分からないのですが、各種メディアによると海外で働いているカンボジア人労働者は、100万人以上です。

2015年時点、カンボジアの労働力人口は861万人(参考:公益財団法人 国際労働財団ですので、約12%以上が海外に流出していることになります。

また、2012年の世界銀行などの調査によると、カンボジア国外で就労する労働者から国内へ送金された金額が約2億5600万ドルにのぼりました。これは、同年カンボジアのGDPの約1.8%を占めます。

 

カンボジア人の出稼ぎ先はマレーシアや韓国、中国、日本など近隣諸国が中心となっています。中でも、人気があるのがお隣の国 タイです。

私たちの事業地であるバッタンバン州カムリエン郡は、カンボジアの北西部に位置し、車で15分もあればタイ国境に着くことができる地域です。それもあって、私が接する機会のあるカンボジア人出稼ぎ労働者の多くは、タイに行っているような気がします。

タイでは治安の悪化を懸念してか、2014年頃から不法就労者の取り締まりが厳しくなりました。カンボジアはじめ、ラオスやミャンマー、ベトナムなどの近隣諸国からの出稼ぎ労働者に対しては、パスポートに加えて「ピンクカード」と呼ばれる一時的な労働許可証を取得することで、タイ国内での就労が認められています。

そのピンクカードを取得したカンボジア人は、2016年4月から7月の4ヶ月間だけで30.9万人であったと報告されています。(参考:ミャンマー、カンボジア、ラオスなどのタイ国内労働許可登録者数を発表 | ASEAN JAPAN

 

物理的に近くて行きやすいというのもひとつの理由でしょう。それだけでなく、タイの最低賃金の高さも魅力的なのでしょう。

カンボジアでは、労働職業訓練大臣によって2017年の末までに全業界における最低賃金を設定する意向が示されましたが、現状、縫製業・被服業及び製靴業に従事する労働者に対してのみ、月額153ドルという最低賃金が設定されています。(参考:2017年のカンボジア月額最低賃金は153ドル[政治]

また、カンボジアにおける農作業等の日雇い労働で得られる日当は、村人たちから話を聞く限りでは約5ドルといったところです。毎日仕事があったとしても、月に150ドルほど収入が得られたら良い方です。

一方、タイでは今年3月に、1日8.48ドル(月額約254.4ドル)であった最低賃金が、バンコクと都市部6県において、1日8.76ドルに引き上げられました。これは月額にすると約262.8ドルです。(参考:Cambodian workers see Thai salaries rise , National, Phnom Penh Post

 

国の「経済発展」の差によって(それだけではありませんが)、最低賃金の金額差がカンボジア人のタイへの出稼ぎを後押ししていることは、想像に難くありません。

 

押し付け?

話を戻します。

先日インタビューを行なった男性の奥さんは、長期間バンコクで働き、収入をカンボジアにいる家族に送金しています。今回は3ヶ月振りの帰国だそうです。「パスポートの更新」と言っていたのでおそらく「合法的な」出稼ぎ就労者なのでしょう。

そして、彼の話を聴いていて思ったこと。

 

価値観の押し付けなのでは、という疑問。

というのも、彼の話を聴きながら「家族は一緒に暮らした方が幸せだろう。出稼ぎをしなくても良い環境をつくりたい」と自分は思っていたのです。

しかし、彼はその状況をこう言ったのです。

 

「とってもシンプルなんだ」

 

奥さんは奥さんで、バンコクで働く。彼は地雷事故のために片足を失い、家で孫の面倒をみる。そういう役割なんだと。確かに、日本でも単身赴任の家庭は少なくないですし、現に私も親元を離れてカンボジアに来ています。

 

彼の家族は経済的な理由で、ばらばらで生活せざるを得ない状況です。すでに結婚している娘夫婦や小さな孫も同じ家に住んでいて、家族は一緒に暮らす方が幸せだ、と私は思っていました。

でも、奥さんはバンコクでよりたくさん働いて、よりたくさん収入を得て、それをカンボジアの家族に送金する。もしかしたら、彼らにとってはその方が幸せなのではないでしょうか。

私たちがやろうとしていることは、家庭菜園や家畜の飼育による収入源の多様化で、今日何かやったからといって、明日結果が出るものではありません。ならば、今の生活を維持する方が彼らにとってはベターな選択なのかもしれません。

しかし、長期的に見ると、持続可能な生活を送るためには、やはり今、何かを変えていく必要があります。でもそれはあくまでもこちら側の考えであって、「今」彼らが求めているものとマッチするのでしょうか。彼らの「幸せ」に踏み入ることが許されるのでしょうか。

そんなことを考えていました。

 

「本当に意味のある支援」とは。

 

すぐに答えは出ませんが、ひとつ言えることはこの問いに向き合い続けること。言い換えると、思考を停止させないこと、と同時に、手足を動かし続けること。

現場で直接、対象の人や地域と触れ合えるからこそ、この問いに対する答えに近づけるような気がしています。

時間はかかるかもしれません。

答えはないのかもしれません。

 

しかし、向き合い続けることを止めてはいけないなあと、そんなことを考える今日この頃です。

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photo by Yuki Nobuoka

 

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カンボジア事業紹介「自分たちの未来は自分たちの手で」

学生時代に本格的に「国際協力」に携わり始め、インターンシップ・フェローシップとしてお世話になった認定NPO法人テラ・ルネッサンスの職員として、私は現在カンボジアに滞在しております。

テラ・ルネッサンスは「すべての生命が安心して生活できる社会(=世界平和)の実現」をヴィジョンに掲げて、「地雷」「小型武器」「子ども兵」という3つの問題の根本的な解決を目指し、国内外における「平和教育」に専門的に取り組む国際協力NGOです。

前回の記事にて、私が最も深く関わっている「地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援プロジェクト」についてご紹介しました。今回はまた別のプロジェクトについてご紹介したいと思います。東南アジアやカンボジアにご関心がある方や、国際協力にご関心のある学生・社会人の方に、日本に拠点を置く国際協力NGOのいち活動事例としてお伝えできたらと思います。

 

その前に

現在テラ・ルネッサンスのカンボジア事業は主に3つのプロジェクトで成り立っています。

①地雷撤去支援プロジェクト

②地雷埋設地域村落開発支援プロジェクト

③地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援プロジェクト

上記のうち、今回は②地雷埋設地域村落開発支援についてご紹介します。あまり耳慣れない言葉かもしれませんが、JICA(独立行政法人 国際協力機構)によるボランティア制度 青年海外協力隊に「コミュニティ開発」という最も人気の高いと言える職種があります。これ、以前は「村落開発普及員」という言葉を使っていたようです。

そのため「国際協力 村落開発」なんかのキーワードでネット検索してみると、関連書籍や論文、協力隊の方のブログなど、たくさんの情報にアクセスすることができます。ぜひ、お試しください。

 

カンボジアが抱える課題

これは、もう一度書いても良いのですが、ほぼ同じ内容になってしまいますので、前回記事をご参照いただきたいと思います。

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上述した「地雷」「小型武器」「子ども兵」という3つの課題のうち、特に「地雷」の問題がカンボジアではメインになっていると捉えています。とはいえ、それが全てというわけではありません。

カンボジアでは、1975年4月17日にポル・ポト率いるクメール・ルージュが首都プノンペンを制圧した後、1979年1月7日までの約3年9ヶ月の間に悪夢のような大虐殺が行われました。その際に、クメール・ルージュは多くの少年兵を使用したことが確認されています。

時代が前後しますが、1960年代後半以降に勃発したベトナム戦争に巻き込まれて以来、約30年以上に渡る戦闘状態が続いたカンボジアは、各派によって大量の地雷が使用され、その埋設密度は世界一であると言われています。

一度埋められたら、その効力は50年以上は続くとも言われている地雷。その恒久性も「悪魔の兵器」と呼ばれる所以です。撤去がなされるか、誰かが踏んで爆発しない限り、地雷は埋められた場所に眠り続けるのです。

ポル・ポトはこの地雷に関して

「眠ることもなく、無限の忍耐力を持つ地雷は、完璧な兵士である」 

と発言したとも言われています。

(参考記事:Long after war ends, landmines continue to pose a threat | TRT World

地雷原見学の際に発見された地雷 photo by Yuki Nobuoka

地雷原見学の際に発見された地雷 photo by Yuki Nobuoka

カンボジア地雷対策・被害者支援機関(C.M.A.A:Cambodian Mine Action and Victim Assistance Authority)の報告書によると、1979年~2016年の間、地雷や爆発性戦争残存物による被害者は、報告されているだけで合計64,662名に上り、その約20%は女性と子どもです。地雷撤去の推進や、地雷に関する啓発教育によってピーク時に比べて地雷事故の被害者数は減少しているものの、未だ解決されていないのが事実です。

ここで皆さんにご理解いただきたいのは、地雷は過去の問題ではなく、「現在進行形」の問題のひとつであるということです。

 

村落開発という支援

私たちが活動をしている、カンボジアの北西部は最後まで戦場となった場所であり、大量の地雷が埋設されました。2017年度現在、協力団体であるイギリス発祥の地雷撤去団体MAG(Mines Advisory Group)によって、当該地域内で指定された生活圏内の地雷撤去が完了した3ヶ村を対象に、テラ・ルネッサンスでは住民参加型の村落開発支援を実施しています。

多くの農家の人たちは、その収入を換金作物栽培のみに頼っています。2年ほど前から買取価格が下落し、借金に借金を重ねる人も少なくありません。2015年までは1kg=7〜8バーツ(≒25円)だったキャッサバの買取価格が、2015年以降は1kg=3〜4バーツ(≒12円)ほどに下がっています。

乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

また、土地を持たない人の多くはその日の食べ物を手に入れるために、日雇い労働をする以外に現金収入を得る手立てがありません。出稼ぎや日雇い労働に、自らの子ども達を連れて一緒に働きに行く人もいます。子供も、小学校高学年ぐらいになると立派な労働力としてみなされるのです。

それは、その子達が教育を受ける機会を損失していることを意味します。経済的な理由によって十分に教育を受けることができなかった子ども達は大人になった時、ある一定の収入を得られる仕事に就くことが難しく、自分の子どもを連れて日雇い労働に出かけます。

この連鎖がなかなか断ち切れないでいるのです。

すべての家族がそうとは言えませんが、対象地域のひとつであるロカブッス村では小学校に入学した子ども達の卒業率は15%ほどです。これは他の農村地域にも当てはまることでしょう。

以前の記事でも書いた通り、最終的に村に住み、村の運営を行なっていくのは村人たちです。私たちがやるべきことはその環境を整えることです。具体的には、村人達による月例自治会の開催をサポートし、家庭菜園の推進や家畜・有用昆虫の飼育などを通した収入向上支援、並びに教育施設の建設・整備や小学校での補習授業の実施等による基礎教育支援を行なっています。

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ロカブッス村 自治会の様子 photo by Yuki Nobuoka

 

「自立と自治」の促進

「自立」「自治」と聞いて、どのようなイメージを思い浮かべますか?

自立という言葉を辞書で引くと、「他への従属から離れて独り立ちすること」とあります。しかし、テラ・ルネッサンスが考える自立とは、周りから自分を切り離して、独りで立つこと(独立)とは違うものだと捉えています。むしろ、周囲との関係性の中で自らの力で自分らしく生きることだと考えています。

自治については、自分の将来や地域の課題、国の未来について主体的に取り組む「責任と権限」を持つことだと捉えています。自らが変革の主体者として、社会の課題に関心を持つことが、自治への第一歩だと考えています。

これらを促進していくことが、最終的には自らの家庭を、村を、国を、そして世界を、自らの手でつくっていくことに繋がります。

そして私たちは、こう信じています。

 

 

「ひとり一人に未来をつくる力がある」と。

 

  

こちらも合わせて。

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カンボジア事業紹介「生計を整える」-その2

現在、認定NPO法人テラ・ルネッサンスではカンボジアで大きく3つのプロジェクトを実施しています。

①地雷撤去支援プロジェクト

②地雷埋設地域村落開発支援プロジェクト

③地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援プロジェクト

前回の記事では、上記3つのプロジェクトのうち、私が最もコミットしている「地雷被害者家族の生計向上支援」の目的、それからカンボジアで事業を行う背景をご紹介しました。

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今回はこのプロジェクトについて、もう少し踏み込んでご紹介します。ひとつの事例として国際協力に関心のある方に、特におすすめです。

なぜバッタンバン州カムリエン郡か?

カンボジア北西部タイ国境に位置するこの地域には、大量の地雷が埋設された「K5地雷ベルト」が存在していました。これは、大虐殺を行なったポル・ポト政権以降も続いた内戦時代である1984年後期に、国境を閉ざすために地雷を埋められた地帯です。およそ700㎞の地帯に、200~300万個の地雷が埋設されたと言われています。

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地図のピンが立っている場所がカムリエン郡です。

この地域で生活をする多くの「貧困層」は自身の農地を所有しておらず、地主の小作人として日雇い労働によって日当を稼ぐか、国境を越えて隣国タイでの出稼ぎにより日当を稼ぐ生活をしています。畑地を所有していても、トウモロコシやキャッサバなどの換金作物を栽培する以外に現金収入を得る手段は限られているのです。

これは地雷被害者をはじめとした障害者も同様です。しかし、彼ら彼女らの中には、地雷事故によって片手や片足、あるいは両足を失ってしまっている人もいます。そのような人たちは、義足をはめて働くことができても、農作業の労働によって義足と患部が擦れ、その傷を治すためにさらに治療費が必要になるなどのリスクを抱えているのです。

加えて、2015年頃より換金作物の買取価格が下落したことで、農家の収入は激減しました。これは当会でも数年前から危惧していた事態でしたが、これが現実となった今、彼ら彼女らはこの状況を打開するための情報や技術になかなかアクセスできず、借金をしてまで換金作物の栽培を続けているのです。

カンボジアは多くのNGOや銀行がマイクロクレジットを提供しており、比較的、借金に対するハードルは低いです。その代わり、月に3%ほどの高い利子がつけられ、一度借りたら借金を返すために新たな借金をする人も少なくありません。そのようにして、雪だるま式に借金が増えていき、担保として居住していた土地を取り上げられてしまう家族がいるのも事実です。そうなれば生活がより一層厳しいものになることは想像に難くありません。

乾燥している大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

乾燥させている大量のキャッサバ photo by Yuki Nobuoka

地面に埋められた地雷を含む爆発性戦争残存物の撤去は、ゆっくりとではありますが着実に進んでいます。しかし、例え地雷撤去が完了しても地雷汚染の脅威による影響は大きく、この地域に住む人々は社会経済的に脆弱な環境の中を生きているのです。

 

「生計」の向上

このように、厳しい状況下で生活しているカムリエン郡の障害者家族ですが、決して諦めてはいません。その日の食べ物を買うために、子どもを学校へ通わせるために、明るい未来を手に入れるために、今日も必死に働いています。

テラ・ルネッサンスでは、同地域の障害者家族100家族に対して「生計」向上支援を行います。単なる「収入」向上支援では、彼ら彼女らが生活を改善していくのは難しいのが現実です。

日雇い労働でお金を稼いでも(1日あたり約5ドル)そのほとんどを、食費や借金の返済に使います。自給用の野菜などを栽培せず、換金作物のみを栽培する多くの農家は、お米をはじめとする食材を買って来ざるを得ません。ほぼ毎日、市場へ食材を買いに行く人もいます。その場合、数キロ先にある市場まで移動するためのバイクのガソリン代もかかるのです。

このような状況に対して、こう考えています。

いくら収入が増えても、支出がそれ以上にあれば生活は苦しいままです。

逆に、いくら収入が少なくても、支出がそれ以下であれば少しずつでも貯金をしていくことができます。

生計向上には「収入を増やす」という視点はもちろん大事です。それと同様に、あるいはそれ以上に「支出を減らす」という視点が大事だと、私たちは考えています。

単に、収入向上のための技術を提供するだけではなく、上記のような視点を持つ機会を提供することも、このプロジェクトにおいて非常に重要なポイントとなります。

具体的な活動としては、家庭菜園での野菜栽培や鶏、牛、やぎなどの家畜飼育、ハリナシミツバチの養蜂などの栽培・飼育技術訓練の機会を提供し、それらを実践できるような環境を整えていきます。その一環として、隣国タイでの研修があったのです。また、家族の収支バランスやグローバル経済に関するワークショップなどを実施します。

このような形で、少しずつ「収入」と「支出」のバランスを整えていくのです。

また、少しの土地で実践可能な家庭菜園や、家の周りでできる家畜飼育を通して、体の一部とともに喪失しかけてしまった生きがいや自尊心を取り戻すことにも繋がると信じています。これらの複合的な農業技術を提供し、トウモロコシやキャッサバなどの換金作物栽培に依存した生活からの脱却を図ります。そして、自らで管理可能な範囲における持続可能な生活を手に入れられるよう、私たちはサポートしていきます。

地雷によって右足を失った男性 photo by Yuki Nobuoka

地雷によって右足を失った男性 photo by Yuki Nobuoka

カムリエン郡がひとつのロールモデルとなり、まだ地雷撤去が進んでいない地域が抱える潜在的な課題に対する解決策を、本事業で提示できればと思います。

 活動の様子は随時、ご報告していきます。

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認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、「地雷」「小型武器」「子ども兵」「平和教育」に取り組む国際協力NGOです。この度、京都事務局における「パブリック・リレーションズチーム」の正職員募集を開始しました。

いつかは国際協力を仕事にしたいというあなたにおすすめです。

ご一緒に、世界平和を実現しましょう。

詳細はこちらから。

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カンボジア事業紹介「生計を整える」−その1

私は学生時代に1年間の休学をし、ウガンダ共和国やブルンジ共和国、カンボジア王国、ラオス人民民主共和国などに派遣していただき、認定NPO法人テラ・ルネッサンスのインターン生として、アジアやアフリカの国際協力現場を経験させていただきました。

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そして、様々なご縁とタイミングのおかげで新卒で同団体へ就職し、カンボジアに滞在しながら海外事業に携わっています。これまでにいくつか記事を書いていますが、「今、お前は何をやっているんだ?」という疑問が、皆様の頭の中にあることでしょう。

カンボジア事業

現在、テラ・ルネッサンスではカンボジアで大きく3つのプロジェクトを実施しています。

①地雷撤去支援プロジェクト

②地雷埋設地域村落開発支援プロジェクト

③地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援プロジェクト

カンボジアに限らず、それぞれのプロジェクト毎に目標を持って展開しているのですが、最終的なゴールは団体のヴィジョンである「すべての生命が安心して生活できる社会(=世界平和)の実現」です。

事業地のひとつであるロカブッス村の子ども達 photo by Yuki Nobuoka

事業地のひとつであるロカブッス村の子ども達 photo by Yuki Nobuoka

これから2回に渡って、上記3つのプロジェクトのうち私が最もコミットしている「地雷被害者家族の生計向上支援」をご紹介します。本事業は、JICA(独立行政法人 国際協力機構)による草の根技術協力事業(パートナー型)というスキームで、2017年4月にプロジェクトを開始しました。将来、国際協力を仕事にしたい大学生や社会人の方に、ぜひお読みいただきたいです。

目的

JICAに提出している正式名称は「カンボジア地雷埋設地域の脆弱な障害者家族への生計向上支援事業」です。このプロジェクトの目標は、カンボジア王国バッタンバン州カムリエン郡の障害者とその家族の生計向上です。

この事業によって得られた成果が、中長期的にはバッタンバン州全体の障害者とその家族の生計向上に寄与すると考えています。そのために、今回の事業ではテラ・ルネッサンスがもともと活動をしていたカムリエン郡に居住する、地雷被害者を含む障害者100家族の支援を行います。

私たちの最終的な目的は、「テラ・ルネッサンスが必要とされなくなる社会」です。その実現のためには、私たちだけでプロジェクトを運営していては意味がありません。以前の記事に書いた通り、私たちはあくまでも「外部者」であり、現地を1番よく知っているのは現地の人です。そのため、本事業実施にはカウンターパートという存在が必要不可欠となります。そして、今回のプロジェクトでは、バッタンバン州農林水産局と、環境を守るための自然農業を主とした活動をしている現地NGO CRDNASE(Community Rural Development of Natural Agriculture for Supporting Environment)をカウンターパートに、協働で事業を実施してきます。

将来的には、テラ・ルネッサンスがいなくなっても、彼ら彼女らが今回の事業を継続、改善していけるようにしていかなくてはなりません。

地雷被害者が使用する義足 photo by Yuki Nobuoka

地雷被害者が使用する義足 photo by Yuki Nobuoka

 

※カウンターパートとは・・・

国際協力事業を行う際に、現地の実施期間、技術の受け入れ先、政策アドバイスの対象となる人や機関

(参考:国際協力NGOボランティアプラットフォーム)  

そもそも、なぜカンボジアか?

1960年代後半のベトナム戦争に巻き込まれて以来、約30年以上に渡る戦闘状態が続いたカンボジアでは、「悪魔の兵器」と呼ばれる地雷が数多く使用されました。その数は、推定400万~600万個に及ぶとされ、埋設密度は世界一と言われています。

特に、大虐殺を行ったポル・ポト政権終結の1979年以降、ポル・ポト派、政府軍(ベトナム軍とヘン・サムリン政権の連合軍)、そしてシハヌーク派、ソン・サン派の4派による内戦が勃発し各派が大量の地雷を使いました。

また、ベトナム戦争中、北ベトナムへの重要な補給路であったホーチミン・ルートは、ラオスからカンボジア東部のジャングルを通っていたため、カンボジア国内も米軍による爆撃の対象となりました。

地雷だけでなく、当時、米軍が使用したクラスター爆弾は不発率30%以上と言われ、未だに不発弾として地下に残っています。さらに歴史を遡ると、第2次世界大戦中にインドシナ進駐をした旧日本軍が使用した爆弾の不発弾が、カンボジア国内でも見つかっているのです。

カンボジア地雷対策・被害者支援機関(C.M.A.A:Cambodian Mine Action and Victim Assistance Authority)の報告書によると、1979年~2016年の間、地雷や爆発性戦争残存物による被害者は、報告されているだけで合計64,662名に上り、その約20%は女性と子どもです。性別や年齢を問わず、 地面に埋設された爆発物による死や負傷の恐怖と、人々は常に隣合わせの生活を強いられているのです。

紛争による負の遺産を抱え続けている農村部に比べて、都市部の発展には目を見張るものがあります。主に中国資本で「先進国」さながらの高層ビルや大型スーパーマーケットなどが次々と建設されている一方で、地雷埋設地域をはじめとする農村部はその経済発展に取り残されている現状があるのです。

首都プノンペンに建つイオンモール photo by Yuki Nobuoka

首都プノンペンに建つイオンモール photo by Yuki Nobuoka

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次回はもう少し踏み込んで、事業を紹介します。

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認定NPO法人テラ・ルネッサンスは、「地雷」「小型武器」「子ども兵」「平和教育」に取り組む国際協力NGOです。この度、京都事務局における「パブリック・リレーションズチーム」の正職員募集を開始しました。

いつかは国際協力を仕事にしたいというあなたにおすすめです。

ご一緒に、世界平和を実現しましょう。

詳細はこちらから。

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ミツバチの奥深さ-養蜂技術研修のまとめその2

先週末に、事業地であるカンボジアからお隣の国、タイにプロジェクトメンバーと研修に行ってきました。

前回の記事では、養蜂という産業は2種類あること、それからハリナシミツバチという生物について少しまとめました。

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今回はもう少し、ハリナシミツバチという生き物について掘り下げてみたいと思います。そして、その養蜂が国際協力、ひいては世界平和にどのようにつながるのかを書いて生きます。

日本では生息不可能?

皆さん、ハリナシミツバチという生物をご存知でしたか?

甘党の私は、蜂蜜ももちろん好きですが(コーヒーに入れると最高に美味しい時がありますよね)蜂蜜というと、いわゆる「ミツバチ」のもの以外にあるなんて想像もしておらず、認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業でその名を聞くまで、ハリナシミツバチについて全く知りませんでした。

それもそのはずで、ハリナシミツバチは日本にいないのです。熱帯、亜熱帯地域を主な生息地として分布しているハリナシミツバチは、平均気温が10℃を下回る日が2日以上続くと、コロニー(巣)が潰れてしまいます。つまり、日本の冬を越すことはできないのです。

花にとまるハリナシミツバチ photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス

(花にとまるハリナシミツバチ photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

寒さに弱いのは他のハチにも当てはまります。日本でも養蜂が行われているミツバチ類も決して寒さに強いとは言えません。しかし、彼ら彼女らは体温恒常性という性質を持っており、自らの羽を擦り合わせることで発熱し常に巣内の温度を30℃ほどに保っているのです。

しかし、その習性を持たないハリナシミツバチは、もしも日本で寒さに遭ったらただじっとして、コロニーが壊れていくのを待つしかないのです。

高い抗菌性を誇るプロポリス

健康食品としても人気のあるミツバチ関連の製品。ローヤルゼリーやプロポリスなんて言葉を目にしたこと、耳にしたことがあるかと思います。

実はこのプロポリスがとんでもなく凄いやつなんです。

プロポリスを集めて活用しているのは、セイヨウミツバチとハリナシミツバチ類のみです。プロポリスとは、簡単に言うと「植物の分泌液と、働き蜂の唾液との混合物」です。働き蜂は自然界の様々な植物の樹皮や蜜、花粉などを集めてきます。その過程において生成される、腹部にある分泌腺から出る蜜蝋との混合物を指すのです。

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(巣の入り口に集まるハリナシミツバチ photo by Yuki Nobuoka)

プロポリスの成分は主にそのもととなる植物の樹脂や樹液に依拠し、植物の持つ抗菌性や抗ウイルス性などを引き継いでいると言えます。その性質をハチたちは自らの巣作りに生かし、細菌や疫病、その原因となる微生物から身を護っているのです。

セイヨウミツバチは巣を樹木の空洞内などに作ります。その時に生じる、樹木と巣の隙間を埋めるためにプロポリスを活用し、その量は決して多いとは言えません。

一方、ハリナシミツバチは巣自体をプロポリスで作ってしまうのです。そのため、ウイルスによる感染症などの攻撃を受けるセイヨウミツバチに比べて、ハリナシミツバチはそのような病気に感染したという報告はこれまで見られず、進化の過程の中で針を退化させ、ほとんど完全な自己防衛方法を習得していると言えます。

さらに、ハリナシミツバチの巣内部「蜜ポット」と呼ばれる蜂蜜を貯めておく部分も、プロポリスでできているのです。抗菌性の高いプロポリスの成分が蜜に溶け出すために、ハリナシミツバチの蜂蜜にも多様な成分が含まれています。ちなみに、蜜を絞った後の蜜ポットはそれ自体でも高価で売れたり、それをお酒に漬けておくと体内環境を整える飲み薬として使用可能だそうです。

蜜を絞る前の「蜜ポット」 photo by Yuki Nobuoka

(蜜を絞る前の「蜜ポット」 photo by Yuki Nobuoka)

蜂蜜は甘味料として利用されるのはもちろんですが、医療目的としても活用されてきました。特に、ハリナシミツバチの蜂蜜に関しては後者の活用が広くなされており、比較的研究の進んでいるマヤ族では、年に1回採取されるハリナシミツバチの蜂蜜は、傷口や皮膚病に対する塗り薬として、あるいは目薬として使用されています。蜂蜜を目薬として目にさすのって、結構勇気がいりそうですが。

ミツバチ類の養蜂を行うなら、やはり感染症などのリスクがあるために、一般的な農業と同様に消毒剤や殺菌剤の散布が必要です。人工的な「薬」の使用は、作り出される蜂蜜や、その他の生物に少なからず影響を及ぼすでしょう。

しかし、巣自体が高い抗菌作用を持つプロポリスでできたハリナシミツバチの養蜂は、その必要がありません。つまり、100〜300mと言われるハリナシミツバチの行動範囲内に化学物質を使用した植物を置かなければ、100%自然から作られた蜂蜜が出来上がるのです。

プロポリスに関しては、研究が盛んになっている分野でもありますので、皆さんでも色々と調べてみてください。

自然の営みの中で生きる

これがハリナシミツバチはじめ、養蜂をする1番大事なことだと思います。

蜂蜜を作るためには蜜源となる植物が周りにないといけません。働き蜂は飛び回り、植物から様々な物質を集めると同時に、「授粉者(pollinator)」としての役割を担い、花粉を運んで花の交配を助けます。そして、彼ら彼女らが作った蜂蜜の恩恵を、私たち人間が享受しています。

しかし、そのような自然界のプロセスを頭の中からすっ飛ばして、一部の人間はとても勝手な行動をしています。ひとつ、個人的に残念なニュースがありました。

世界的に減少しているハチの代わりに、小型ドローンを使用して農作物の授粉をしようというものです。

 

「いや、目指すのはそっちじゃないでしょう」と思ってしまいます。

ミツバチ減少の理由は完全に解明されている訳ではありませんが有力な説として、農作物に使用されている農薬・殺虫剤(特にネオニコチノイド系が有害だと言われています)や、蜜源の中に存在する遺伝子組換えのトウモロコシなどが挙げられています。

ハチが少なくなっているのなら、戻ってこられるような環境を取り戻しましょうよ。

もちろん、それには途方もなく長い時間がかかることでしょう。多額の資金が必要となるでしょう。

しかし、本当に持続可能な世の中にしていきたいのなら、もう目先にある人間の利益だけを考えた行動選択をやめましょうよ。

小さなことではありますが、ハリナシミツバチの養蜂を行うということも、「世界平和」の実現に繋がっているのだと、私は考えます。

なぜなら、テラ・ルネッサンスが目指している「世界平和」は「すべての生命が安心して生活できる社会」であるからです。

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最後に、尊敬している認定NPO法人テラ・ルネッサンスの職員から教えてもらったこのスピーチを紹介して終えます。

1992年6月にブラジル リオ・デジャネイロで開かれた「地球環境サミット」にて、当時12歳だったカナダ人のセヴァン・スズキさんのスピーチです。

 

「どうやって直すのか分からないものを壊しつづけるのはもうやめてください」

 

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自然から学ぶことは本当にたくさんあります。

今回の研修での学びを、実際のプロジェクトに落とし込んで活動を展開していくので、また様子をご報告していきます。

 

こちらも合わせて。

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ミツバチの奥深さ-養蜂技術研修のまとめその1

先日、私が滞在しているカンボジア王国バッタンバン州から隣国タイに、プロジェクトメンバーと研修へ行ってきました。その際に、カンボジアでは感じなかったこと、タイに行って感じたことを前回の記事で紹介しています。

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私が働いている、認定NPO法人テラ・ルネッサンスのカンボジア事業では、地雷撤去後の地域における村落開発支援や、地雷被害者を含む障害者家族の生計向上支援等を行っています。

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「地雷撤去後の地域」という表現に関して

ある土地から地雷が完全になくなったと判断するのは非常に難しく、ここでは「地雷原として指定されている場所の地雷除去は終わったが、指定されていない区域に地雷が無いとは言い切れない」ことを、敢えて書かせていただきます。

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今回は、後者の障害者家族の生計向上支援事業の一環で行う、ハリナシミツバチの養蜂技術・蜂蜜の製品化に関する研修を受けました。プロジェクトに関わるメンバーと、タイ語-クメール語の通訳と計10名で、タイのチャンタブリ県農業職業促進開発センターにて、2泊3日で受けた研修の内容や様子などをお伝えします。

国際協力と養蜂と、何がつながっているのか。あるいは、生計向上支援のひとつの方法として、養蜂という選択肢があるということを、少しでもお分りいただけたらと思います。

ハリナシミツバチに関する座学研修の様子 photo by Yuki Nobuoka

(ハリナシミツバチに関する座学研修の様子 photo by Yuki Nobuoka)

養蜂には2種類ある

皆さん、世界の養蜂産業には2種類あることをご存知でしょうか?

ひとつは、今皆さんの頭の中に思い浮かんでいるそれです。ミツバチです。

ミツバチ類を育てて蜂蜜を採る養蜂は"Apiculture"と呼ばれます。ミツバチはその種類が少なく、オオミツバチ、コミツバチ、セイヨウミツバチ、そしてニホンミツバチを含むトウヨウミツバチと、大きく4種類に分けられます。

 

そして、もうひとつが私たちのプロジェクトでも採り入れるハリナシミツバチ類の養蜂です。ハリナシミツバチは英語で"stingless bee"と言い、その名の通り針を持たないのです。このハリナシミツバチ類を育てる養蜂を"Meliponiculture"と呼びます。

ハリナシミツバチはその生態に従って種分化が激しく、現在400種類以上が世界に生息しています。ちなみに、研修で訪れたタイでは、30種類以上の生息が確認されています。

花にとまるハリナシミツバチ photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス

(花にとまるハリナシミツバチ photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

進化の過程で針を退化

皆さんもご存知の通り、ミツバチは針を持っています。針を持っているハチは、実はメスだけなんです。ハチの持つ針は、卵を産むための産卵管、あるいはそれが変化したものだからです。人を刺すアシナガバチやスズメバチ、ミツバチなどは社会性昆虫と呼ばれ、自分たちの巣を脅かすものに対して針を使って刺しにいくそうです。

私も2年前に、テラ・ルネッサンスの事業地のひとつであるアフリカ ブルンジ共和国を訪れた際に、ミツバチに刺されました。ここでも対象地域に暮らす村人たちの収入源を多様化させることを目標に、養蜂を行なっています。採蜜の様子を見学しに行き、養蜂箱の近くで写真を撮っていると、防護服を来ていたにもかかわらず1匹が中に入り、あごのあたりを刺されてしまったのです。結構ちくっときました。

見学後すぐに、ブルンジ人職員に針を抜いてもらったのですが、同行していた日本人職員に「腫れるよ〜」と言われ、どれだけ腫れるのか少し怯えていました。しかし、翌日になっても全く腫れることはなく、ブルンジ人職員からはこう言われました。

「髭のおかげで、ミツバチも上手く刺せなかったのだろう。ハハハ

この時ほど、あご髭を伸ばしていて良かったと思ったことは、後にも先にもありません。

2015年9月 ブルンジの事業地で養蜂を見学する筆者

(2015年9月 ブルンジの事業地で養蜂を見学する筆者)

 

脱線してしまいましたが、ミツバチが針を持っている目的のひとつは、巣を守るために敵を攻撃することです。

一方、ハリナシミツバチには針がありません。それは、巣の防衛を放棄したという意味ではなく、針が必要ではなくなったからです。

どういうことかと言うと、針を使って敵を刺すのではなく、例えば刺激物を吐き出したり、そもそも巣の入り口を隠したり、抗菌性の高いプロポリスで巣を作ったりと種によって異なるのですが、針の要らない防御方法を確立していったのです。そのため、針は進化の過程において退化したと考えられています。

その代わりと言ってはなんですが、採蜜や分蜂(巣を分ける作業)の際に巣箱を荒らそうとすると時々噛んできます。ハリナシミツバチにとっては精一杯の力を振り絞って噛んでくるのでしょうが、何ぶん、ハエぐらいの体の大きさなのでその力は微々たるものであり、痛いと感じるレベルではありませんでした。

ミツバチ類の養蜂を行う際には刺される心配があるために、針が通らない程度に分厚い防護服が必須となります。それに、養蜂を行なっている地点の周辺に住む人たちは、ミツバチに刺される危険性がゼロではありません。(普通にしていたら基本的には刺されません)

しかし、そもそも針を持たないハリナシミツバチ類の養蜂には、そんなに大掛かりな防護服は必要ありません。実際に、研修で訪問した農家の方は、薄手のナイロンパーカーを着て作業を行なっていました。

タイ チャンタブリ県のハリナシミツバチ養蜂農家 photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス

(タイ チャンタブリ県のハリナシミツバチ養蜂農家 photo by 認定NPO法人テラ・ルネッサンス)

つまり、針に刺されない安全性というのが、ハリナシミツバチの養蜂を行うメリットのひとつなのです。

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自然界って本当に興味深いですよね。

(人が入って研究がなされている時点で、どこまで「自然」であるかはなんとも言えませんが)

次回も引き続き、タイでの養蜂技術研修のまとめを書いていますので、蜂蜜好きの方はぜひ、ご一読ください。

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タイで感じた「肥満」の危機。

先週末の土曜日から2泊3日でお隣の国 タイに研修に行ってきました。現在携わっているプロジェクトにおいて、日本ではあまり馴染みのないハリナシミツバチの養蜂をするため、タイのチャンタブリ県農業職業促進開発センターに行ってきたのです。(研修の様子やプロジェクトについては、またブログにてお伝えします)

 

私が働く認定NPO法人テラ・ルネッサンスの事業地は、カンボジアの中でも北西部に位置する、バッタンバン州というところです。

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見ての通り、タイの国境付近にあり、車で2時間ほど西へ走ればタイに行くことができちゃいます。しかし、ここの国境を超えるのは少し面倒くさく、カンボジア人スタッフやカウンターパート団体の職員を含め、合計10人での国境越えには少し時間がかかりました。

 

旅行先としても人気のこの2ヶ国。たくさんのバックパッカーが国境を陸路で超えてきたことでしょう。一般的な陸路でのルートは、アランヤプラテート(タイ)〜ポイペト(カンボジア)です。ここは利用者も多く、最もぼったくられやすいという悪名高いルートでもあります。私はこれまで3回ほど通ったことがありますが、特に変なことにはなりませんでした。おそらく、普通にしていれば大丈夫です。

今回の研修にあたって使用したルートは、少数派であろうダウン(Daung、カンボジア)ーバンレム(Ban Laem、タイ)ルートです。イミグレの前ではたくさんの机が置かれ何やら忙しなく、ひたすらパスポートを見ながら手を動かしている人たちが座っています。

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旅慣れた方ならご存知かと思いますが、カンボジアからタイに入る際にも出入国カードを書く必要があります。ここの国境では、そのカードを自分で書かせてもらえないのです。カードなんてパスポート番号や滞在の情報を記入するだけで、初めての人でも誰かに聞けば自分で書けるにも関わらず、そのカード記入を代行するというビジネスが成り立っているのです。ちなみに、カンボジア人価格で1人120バーツ(約400円)でした。日本人ならもう少し値段が上がるかもしれません。

 

そんなこんなで無事にタイに入国して目に入ったのが、久しぶりにのセブンイレブン。

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カンボジアにも進出の表明はされているものの、未だその動きはありません。しかし、カンボジアの国境から100メートルほど歩けば、当たり前のようにあるセブンイレブン。さすが、日本に次いで世界で第2位の店舗数を誇る国です。街を少し移動すると、日本で見るのと同じぐらいの頻度で見つけることができます。

セブン‐イレブン店舗数6万店に 1位日本、2位タイ | newsclip (ニュース、ASEAN、その他のニュース)

 

2016年のGDP成長率は前年比3.2%増(日本は1.2%)と、世界銀行の定義による「中進国」として継続的に経済発展を遂げているタイですが、必ずしもその影響は良いものばかりではありません。環境問題や格差拡大など、経済発展に伴う問題も明るみに出てきています。

中でも、私が先日のタイ研修に行った際に感じたのは「肥満問題」です。その肥満具合が、ちょっとぽっちゃりなんて可愛いものではなかったのです。

糖尿病はじめ、様々な生活習慣病の原因である肥満は、世界保健機関(WHO:World Health Organization)も世界的な健康上の問題として、対策に勤しんでいます。

『ルポ 貧困大国アメリカ』(岩波新書)においては、アメリカにおける肥満(特に児童)の背景には貧困問題があることが指摘されていますが、タイでは少し文脈が異なるようです。

WHOによると成人男女は、BMI25以上が「太り過ぎ(overweight)」、BMI30以上が「肥満(obesity)」と定義されます。(ネット上ではこれらの言葉が厳密に使い分けられていないため、少し情報が錯綜している感が否めません。。)

タイはASEAN諸国でインドネシアに次ぐ2番目の肥満率を記録し、2015年には糖尿病患者が400万人に上ったと報告されています。生活習慣病、肥満について国レベルで問題視されているのですが、特にお坊さんたちに蔓延している「太り過ぎ」は大きな問題となっているようです。

タイもカンボジア同様、上座部(小乗)仏教の国なので、お坊さんは修行を積んでいて質素な食生活を送っているというイメージがあります。しかし、バンコクにあるチュラーロンコーン大学の研究結果によると、太り過ぎと判断された僧侶は48%にも上ったそうです。びっくりですよね、タイではお坊さんの2人に1人が太り過ぎだなんて。。

その原因のひとつは、やはり食生活にあるようです。

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タイ人の1日あたりの砂糖摂取量はティースプーン約25杯分という、驚くべきほどの砂糖消費大国でもあります。加えて、ここ数年の間に国の経済発展に伴い、外国資本のファストフード店舗数が急激に増えてきたのも、肥満問題を加速させているひとつの要因でしょう。同時に、情報のグローバリゼーションも急進し、いわゆる「先進国」のライフスタイルにインターネットやSNSを通じて触れる機会が増え、憧れを抱く人が多数いるのも想像できます。その結果、これまでとは比べ物にならないほどの糖分、塩分の摂取をしていることでしょう。

体重が増えること自体を悪いとは思ってはいません。その結果として、国をより良くする機会が奪われていることが問題なのです。

実際に、上記の記事によると、糖尿病を含む肥満が原因で生じた病気に対処するためにタイ政府が支払った医療費は2012年だけで約9500万円以上です。

これだけのお金を他のこと(国民の社会保障や教育分野等)に使うことができれば。。

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この「肥満問題」を通して、ヒトは何をやっているんだろうというのが率直な感想ですね。自分たちで問題を作り出して、自分たちでそれによる害を被って、自分たちでそれを解決するために新たな問題を作り出して。。

問題を起こした後に慌てて対処を考える。

そうすると、問題に対処することが「目的」になってしまい、問題の根本的な解決にはなかなか目が向かない。

 

これって「紛争」や「貧困」「環境破壊」など、世界平和を妨げている問題すべてに通じるんですよね。

結局、自分たちで自分たちの首を締めて。

自分たちの未来の世代に大きな大きな問題を残していって。

根本的な問題解決のためにできることを考えて、行動を起こす人がもっと増えていかないと。

 

とにかく、何としても今の体型を維持しようと、改めて決意をしたタイ研修でした。(研修での学びはそれだけではありませんのでご心配なく)

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